建築資材展望 コンクリート型枠用合板編 

東京

コンクリート型枠用合板を使った建築現場の例

 コンクリート型枠用合板の販売価格はこの2年ほど横ばいで推移してきた。ただ、その大半は輸入品で、現地のメーカーなどが生産体制を維持するため建販商社に値上げを求めている他、原木の伐採量の不安定さや円安の進行もあってコストがアップしている。関係者はもはや買い付け時の工夫ではコストを抑えられないとみている反面、需要が低迷する国内で販売価格に転嫁すれば購買意欲の減退につながりかねないとジレンマを口にする。  コンクリート型枠用合板の多くは東南アジアから輸入される。現地で伐採された原木を加工して製造され、それを建販商社が買い付けて国内の需要家に届ける。建販商社が現地のメーカーなどと買い付け交渉する際、これまでは仕入れ量を上乗せして価格を抑える方法をとってきた。しかし、国内需要の低迷を背景に仕入れ量を絞らざるを得ない。価格を抑える術がなくなった中で、現地のメーカーなどからの値上げ圧力が強まっているそうだ。  海外の企業では事業規模が縮小すれば、その規模に合わせて従業員を解雇するのが一般的。従業員の解雇は技術の喪失を伴う。コンクリート型枠合板の生産体制も同様で、すでに廃業したり、工場を統合したりする現地のメーカーなどが出ているという。いったん縮小した事業規模を再び拡大するのは容易ではなく、ある関係者は「今後、需要が高まったときに安定して供給できないかもしれない」と不安視する。  原木の伐採を巡る環境も変化している。通常なら東南アジアは11月から翌年3月ごろまで雨期に入る。地面がぬかるむなどして乾期よりも作業効率が下がるため伐採量は減るものの、水位の上がった川に伐採した原木を浮かべて運べることから輸送効率は高くなる。  だが異常気象の影響なのか、前年度の雨期には雨が降らず川の水位も上がらなかった。かと思えば洪水が起きるほどの豪雨に見舞われ、運搬を控えた原木が流出。山地に入ることもできず、新たな原木の伐採がままならくなって、原木自体のコストが上がった。  建設物価調査会の主要資材価格動向によると、コンクリート型枠用合材の価格は2021年のウッドショックで高騰したものの、22年に入ってから下降し、23年後半以降はほぼ横ばいとなっている。「資材価格が軒並み高騰していると世間では言われているが、コンクリート型枠用合材は蚊帳の外だ」とこぼす関係者もいる。  一方で、買い付け時の工夫では対応できないコストアップを販売価格に転嫁しなければ、コンクリート型枠用合材の流通事業は成り立たなくなる。将来にわたる安定供給を可能にするため、流通関係者、需要家それぞれに適正価格を受け入れる覚悟が求められている。