改正建設業法の全面施行 労務費の基準値、初弾は14職種

中央
 国土交通省は10月27日、改正建設業法に基づく労務費の基準値案を中央建設業審議会のワーキンググループに提示した。今回の会合で追加したのは、住宅分野、電工、とび、空調衛生、土工、鉄骨、切断穿孔、警備の8職種。これまでのワーキンググループで報告した職種と合わせ、改正法を施行する12月の時点で示す基準値の初弾は14職種となる見通しだ。  労務費の基準は、建設工事の施工に必要な労務費の水準を示すもの。公共・民間工事を問わずに適用され、契約当事者間で価格交渉時の相場観としての利用が見込まれる。公共工事設計労務単価に歩掛を乗じて算出する。12月初旬にも開く中央建設業審議会で作成、勧告される。  職種別の基準値は、労務費の基準の考え方を踏まえ、標準的な作業内容や施工条件で想定される歩掛、公共工事設計労務単価に基づき国交省が定める。「㌧あたり」「平方㍍あたり」といった単位施工量あたりの労務費として、具体的な値を例示し、価格交渉を円滑化する。  専門工事業団体と元請け団体、国交省による職種別意見交換会を開き、初弾となる14職種をまとめた。調整中の11職種については引き続き具体化に向けた作業を進め、その他の職種も業界団体からの要望を踏まえて検討する。  今回、追加した職種のうち、住宅分野については、公的な歩掛がないため、歩掛調査を実施した。木造2階建て延べ100平方㍍程度の新築一戸建て住宅を想定し、解体や仮設、基礎、足場、建方から内装、設備まで12工程の歩掛を調べ、それぞれ基準値案を示した。  警備(交通誘導員)についても、建設工事に必要な要素として労務費の職種別基準値を定めることとした。ただし、警備業務の契約は建設工事の請負契約とはならないため、改正下請法(取適法)に基づく価格転嫁の助言・指導や警備業界への要請を通じて実効性を確保する。  調整中を含め、基準値の整備に向けた作業が進んでいるのは合計25職種となる。警備を除くこれらの職種を建設業の許可区分に当てはめると、全29業種中18業種で何らかの基準値案を検討していることになる。  改正法が全面施行されると、著しく低い見積りや見積り依頼、契約締結が禁止される。違反した建設業者は指導・監督、発注者は勧告・公表の対象となる。労務費の基準は、著しく低い見積もりや見積もり依頼、総価での原価割れ契約を指導・監督する際の参考指標とする。職種別の基準値がない職種であっても、基準の考え方に基づいて適正な労務費での見積もり・契約が求められる。  法施行に向け、今後、労務費の基準を活用した見積もり・契約の「運用方針」を提示する。専門工事業者向けには労務費を内訳明示した見積書の様式例なども提示。12月の中建審では標準請負契約約款の改正も予定しており、労務費・賃金の適正支払いに関する表明や情報開示の「コミットメント条項」を盛り込む。  こうした施策を通じ、労務費の基準の実効性を確保。設計労務単価相当の労務費が賃金として技能者に支払われるようにし、他産業以上の賃金水準を実現する。