労働時間規制の緩和 経団連は早期検討要請 「一律の規制適用は問題」

中央

10月27日に開かれた労働政策審議会労働条件分科会

 高市早苗首相が上野賢一郎厚生労働相に対し、時間外労働の上限規制の緩和を検討するよう指示したことについて、10月27日に開かれた厚生労働省の有識者会議=写真=で、労働者代表と使用者代表がコメントした。日本経済団体連合会(経団連)の鈴木重也労働法制本部長は、「(現行の労働時間規制は)自律的に働く労働者にも一律に適用されてしまう点が問題。時宜にかなう指示だ」とし、厚労省に早期の検討着手を求めた。  鈴木本部長は、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」に基づいて賃金を支払う裁量労働制の対象業務を見直すよう要望。「過半数労働組合のある企業では、裁量労働制の対象業務を決定できる仕組みを創設すべき」と訴えた。  一方、労働者代表となる日本労働組合総連合会(連合)の冨髙裕子副事務局長は、「労働者の命と健康を守り、豊かな生活時間を確保することが労働基準法の意義」と強調。過労死や過労による自殺者が減らず、過労死に関する労災補償の請求件数が増加している現状を「政府は極めて重く受け止めるべき」と指摘した。  現行法上でも柔軟な働き方は可能として、「働き方改革を逆行させるようなことは断じてあってはならない」と規制緩和に否定的な姿勢を示した。  こうしたコメントを踏まえ、厚労省は、「誰もが働きやすい労働環境を実現する必要性や、時間外労働の上限規制が過労死認定ラインであることを踏まえて議論を深める予定だ」との考えを示し、出席した有識者に検討への協力を呼び掛けた。  建設業でも、働き方改革の推進により、週休2日対応が進んでいるが、深刻な人手不足に悩まされる現場では、労働時間規制の緩和を求める声が強まっている。また、夏季の平均気温が上昇していることを受け、屋外作業の多い建設業では、夏季の休暇を増やし、それ以外の時期の労働時間を増やせる「柔軟な働き方」を求める声も増えている。