「労務費の基準」運用方針案 取引ルール、見積手順示す

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 国土交通省は、改正建設業法の全面施行を見据え、「労務費の基準」の運用方針案を11月にまとめる。基準に照らして適正な取引の考え方や、見積書の作成手順・様式例、元請けが見積書の作成に当たって順守すべき事項などを盛り込む。適正な労務費・賃金の支払いや、そのための情報開示を契約の当事者が合意する「コミットメント制度」の考え方も示す。  改正建設業法の「労務費の基準」に関する規定の施行に合わせ、各種ガイドライン類として新規に作成する。運用方針では、適正な労務費の相場観を示す「労務費の基準」を活用し、請負契約の当事者が適正に取引するための考え方を示す。  職種別に国交省が公表する労務費の基準値は、標準的な現場を想定して設定しているため、実際の現場条件が異なる場合の取り扱いや、基準に照らして不適正な見積りとなる例などを整理するイメージだ。例えば、施工条件が良かったり、新工法で歩掛を改善できれば、基準よりも低い労務費で見積もっても必ずしも「著しく低い」とは見なされないが、根拠なく歩掛を割り引くことなどは認められないとされる。  運用方針の中で、労務費など必要経費を内訳明示した見積書の作成手順、様式例も示す。元請けが発注者向けに見積書を作成する際の順守事項も記載する。  法施行に合わせたガイドライン類としてはこの他、労務費ダンピングを防止するための公共発注者向けガイドライン案を9月に公表済み。  さらに、改正法に基づく建設Gメンの活動については、元請け・下請け間と受発注者間の「建設業法令順守ガイドライン」をそれぞれ改正予定。合わせて、建設業者の不正行為に関する監督処分基準と、社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインも改正する。  今後の法施行までの流れとしては、12月初旬に開く中央建設業審議会の総会で、労務費の基準案を提示する。建設工事標準請負契約約款にコミットメント条項を盛り込む改正や、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」に基づく経営事項審査の加点措置についても諮る。いずれも、労務費の基準に基づく労務費・賃金支払いの実効性確保策となる。  12月上旬には、職種別に設ける労務費の基準値や、パブリックコメントを経て決定した運用方針、公共発注者向けガイドラインなどを公表。自主宣言制度の運用も開始する。改正法の全面施行は12月12日を予定している。