データでたどる 技術検定試験(1)「若年層シフト」 どこまで進むか 受験者数、2連続で15万人超

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 2000年代の建設投資の縮小に伴い、緩やかに減少してきた技術検定試験の受験者・合格者が、24年度試験を境に増加に転じている。1級第1次検定の受験要件だった学歴・実務経験が24年度試験で廃止され、1級第1次検定の全7種目の受験者数は2年連続で15万人を超えた。1級第1次検定(21年度以前は学科試験)の受験者数が15万人を超えるのは、03年度以来、21年ぶりだ。  技術検定試験の合格者は1級・2級施工管理技士の有資格者となり、建設業法上の主任技術者・監理技術者として現場に配置される。現場で施工管理の役割を担う技術者に明確な定義はないものの、国家資格である技術検定試験の合格は、技術者の重要なキャリアステップの一つだ。中でも、監理技術者として現場で働くことができる1級技術検定の合格は、企業と技術者本人の双方にとって最も重要なステップだ。  ただ、近年はこの監理技術者の高齢化が深刻に進んでいる。監理技術者はこの10年の間、66~68万人とほぼ横ばいだが、年齢階層別では60歳代以上の割合が20年前の13・3%から34・9%まで増加。高齢層の退職が進み、監理技術者が減少することは、建設業全体の施工力の低下に直結する。  こうした課題を解消するため、国土交通省は若年層に技術検定試験の早期受験を促す制度改正を繰り返している。13年度試験までは、1級技術検定を受験するためには、2級合格者で卒業後5年、高卒者(指定学科)で10年の実務経験が必要だったが、14年度試験にこの年数を2年短縮した。  15年度には、実務経験の基準日を受験申し込み時点から試験前日に見直し、さらに1年前倒しで受験することも認めた。  21年度には、技術検定制度の再編に合わせ、2級技術検定の最終合格者であれば、実務経験を求めず、2級合格の翌年に1級第1次検定を受験できるようにした。  こうした制度改正は、受験者数にも影響している。15年度の学科試験(当時)の受験者数は前年度と比べて11・5%増加。21年度試験の1級第1次検定の受験者数は10・6%増えた。  過去20年で最も受験者数を押し上げる効果があったのが、24年度の制度改正だ。国交省は、これまで段階的に緩和されていた受験要件から、実務経験と学歴を廃止した。13年度まで工業高校の卒業者でも28歳まで取得できなかった1級施工管理技士資格は、普通高校卒でも最短22歳で取得できるようになった。  この制度改正を受け、24年度の1級第1次検定の受験者数は51・0%の記録的な増加。反動減が懸念された25年度の受験者数も1・4%増と高い水準を維持した。実務経験の要件緩和により、2級技術検定の受験者が減少することも懸念されたが、1級・2級の第1次検定を合わせた受験者数でみても、前年度の受験者数を15・5%上回った。  建設業の高卒就職者の3年以内での離職率は40%を超える。受験要件の緩和には、業界を離れてしまう若年層をつなぎ止める効果や、他産業からの中途採用者を即戦力化する効果が期待できる。 ◇  ◇  ◇  この連載では、技術検定制度のデータから、試験制度改正の狙いや受験者・合格者数の増減の背景を分析します。