中高層木造の市場形成 プレファブ化促進へ産業界と連携
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建築研究所(建研)は、中高層木造市場の形成を促進するため、産業界と連携し、プレファブ化を前提としたサプライチェーンの構築について研究する。木材加工から現場施工までを手掛ける中小規模の「ゼネコン兼木造建築会社」が大きな役割を果たすドイツをはじめ、海外の先行事例を参考にしながら、標準構法の開発や契約プロセスの検討、BIM活用を通じた新たな生産システムの構築を目指す。
2021年に成立した改正木材利用促進法に基づき、政府は中高層・非住宅分野での木材利用を推進している。住宅分野では在来工法が定着している一方、中高層建築での木材利用には高度なプレファブ生産の普及が欠かせない。
建研は、中高層木造建築の活用が進むドイツ、オーストリア、スイスで現地調査を実施。材料の製造から加工・組み立て、現場施工までを一貫して手掛ける木造建築会社が大きな役割を果たしていることを確認した。中小規模の会社が多数、地域ごとに存在し、中高層木造の市場を形成しているという。
木造プレファブの実現に当たっては、デジタル技術の活用により生産プロセスを垂直的に統合。木造専門CAD/CAMソフトの導入が進んでいる他、BIM活用により設計から木材の製造・加工、施工までのデータ連携が実現しつつある。
このため、ゼネコン・木造建築会社が設計段階から計画に関与する。工場での部材の製造条件やディテールを設計に性格に反映させ、施工段階での手戻りや現場合わせといった負担をなくす商慣行が定着している。
建研は現地調査の結果を踏まえ、国内での中高層木造の定着に向けた建築物の生産システムの変革に向けた研究を開始する。製造・施工までを手掛ける木造建築会社は国内に少ないため、木材製品のサプライチェーンと施工会社の連携強化、垂直統合を後押しするようなデジタル技術を検討。木造CAD/CAMやBIMの統合的運用を研究する。
中高層木造の需要を喚起するため、標準的な構法の開発にも着手する。事業者が任意で採用することを念頭に、調達コストや開発コストの低減につながるような大型パネル・モジュラーの標準仕様を考える。
木造プレファブ構法に関する設計プロセスの研究も進め、木造建築会社が早期に関与する商慣習の定着につなげる。
建築研究開発コンソーシアムを通じ、25年度末にかけて民間企業との意見交換を行う。初回は12月17日を予定しており、建研による先行事例の報告の他、竹中工務店が高層都市木造の実例と展望、大林組がオフサイト施工と設計について説明する。
