技能者のさらなる処遇改善 「月給制の普及」視野に検討

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 国土交通省は2026年度、技能者の入職・定着に向けた新たな方策として、月給制の普及や退職金制度のさらなる充実を検討する。社会保険への加入が建設業許可・更新の要件に追加されてから5年がたち、全ての許可業者が社会保険に加入した今、技能者の処遇を改善する次の一手を考える。  繁閑差のある建設業では、勤務日数に応じた給与支払いの慣行が根強く残る。建設産業専門団体連合会が傘下団体の会員企業やその下請けを対象に給与の支払い形態(複数回答)を調査したところ、「日給月給」が49・6%と約半数を占めた。「月給(固定給)」も63・9%あったため、固定給と日給ベースの併存が実態と言える。  日給月給には建設業の特性に根差した一定の合理性があるものの、休日が増えると収入が減るため、週休2日制を浸透させるハードルとなっていると指摘されている。  12月に全面施行となる改正建設業法も日給月給から固定給へと転換を後押しする。労務費の基準を著しく下回る見積もり・契約を禁止する規定の施行に合わせ、国交省は技能者の技能・経験に応じた適正な賃金支払いを推進。建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収に新たに設ける「目標値」の支払いを目指す方針を示している。一定水準以上の年収を安定的に確保するには、月給制の導入が有効だ。  このほか、処遇改善策として、退職金制度のさらなる充実も例に挙げた。建設業退職金共済制度の掛金相当額を民間工事でも確保する方策など、技能者の処遇を総合的に向上させるテーマを探る。  時間外労働の罰則付き上限規制などの規制逃れを目的とした、いわゆる偽装一人親方対策も継続する。技能者個人が自身の就労実態に照らし、一人親方なのか雇用された労働者に近いのか判断できる「働き方自己診断チェックリスト」の活用率が低い水準にとどまっていることを受け、より簡易に一人親方として適正か否かを判断できる目安の整備を検討する。  雇用された労働者と一人親方で処遇がどのように違うか、技能者個人がメリット・デメリットを判断できるツールも作成し、広く周知する。