労務費基準に運用方針案 受発注者・元下の対応示す

中央
 国土交通省は、改正建設業法に基づく「労務費の基準」の運用方針案をまとめた。技能者に支払う賃金の原資となる労務費を、発注者から元請け、下請けへと行き渡らせる新たな取引ルールとなる。受注者・発注者、元請け・下請けそれぞれの立場から、改正法の施行後に求められる対応を整理。規模や職種を問わず、建設業者に労務費を内訳明示した見積書の作成を求め、労務費を確保する価格交渉のツールとしての活用を促す。  改正建設業法に基づき、国交省は職種ごとの標準的な作業を想定し、公共工事設計労務単価に標準歩掛りを乗じて「労務費の基準値」を作成・公表する。施工条件に応じて建設業者が基準値を見直し、見積書に労務費を内訳明示する。基準を著しく下回るような見積もりや見積もり依頼、総価での原価割れ契約を禁止し、一定水準の労務費を担保する仕組みだ。  運用方針案では、公共・民間工事や、職種、下請け次数を問わず、労務費を内訳明示した見積書の作成が建設業者に求められることを明確化する。  施工条件の良い工事や、施工効率の高い技術を活用する工事は歩掛りも良くなるため、労務費が基準値より低くても問題ない。一方、歩掛りではなく、労務単価部分を引き下げることは不適正だとし、著しく低い場合は建設業法違反となり得る。反対に、歩掛りの悪い工事は基準値より高い労務費も適正となる。  建設業者に対しては、当初・最終見積書を工事完了後10年間、保存することを義務付ける。当初・最終見積書を比較することで、労務費のダンピングを建設Gメンが発見しやすくする。  建設業者による労務費の適正な見積もりが新たな取引ルールの起点となるため、発注者には一定の見積期間を求める。500万円未満の工事で1日以上、5000万円未満で10日以上、5000万円以上で15日以上が必要になる。  元請けに対しては、労務費を重層下請け構造全体で確保する観点から、労務費を内訳明示した見積書の提出を1次下請けに求めることや、2次下請け以下への適正見積りの働き掛けが「期待される」とした。十分な見積もり期間がないときは、下請けに見積もりを取らず、発注者に見積書を提出することも認められる。  元請け・下請けを問わず受注者の立場としては、閑散期を理由とした値引きによる見積もりを可能とした。ただし、労務費や材料費を含めた原価割れ契約は認められず、値引きの原資は受注者の利潤相当分を充てなくてはならない。  建設業許可の不要な事業者は新たな規制の対象外となるものの、こうした小規模事業者こそ労務費の確保が必要だとし、適正契約や材工分離の見積りに努めるよう促している。  運用方針案には、専門工事業者向けに見積書の様式例と「書き方ガイド」を添付。法施行時には様式例をエクセルデータとして提供し、これまで見積書を提出する慣行のなかった事業者も簡易に作成できるようにする。