技能者賃金把握、16団体で 事務負担の軽減が課題
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全国の都道府県・政令市のうち16団体が、発注工事を対象に技能者への賃金支払い状況の把握・確認に向けた調査を行っていることが、国土交通省の調べで分かった。未実施の団体からは、事務負担の大きさを指摘する声もあったという。品確法の運用指針は、賃金支払いの実態把握に向けて公共発注者に一定の役割を果たすことを求めており、国交省は先進事例を参考にするよう、地方自治体に促していく。
改正建設業法で「労務費の基準」が整備されることを受けて、公共発注者の対応を検討する一環で調査した。契約段階では、原則全ての公共発注者に対し、現行の低入札価格調査などを強化する目的で労務費ダンピング調査の実施を求めることとしている。
こうして確保した労務費を技能者が着実に賃金として受け取れるよう、まずは国交省の直轄工事で先行的に賃金の支払い状況を確認する取り組みを試行する。具体的には、受注者の協力を得て、労務費・賃金の支払い状況と技能者の労働時間に関する実態調査を行う。直轄工事での事例を参考に、他の公共発注者にも賃金支払いの実効性確保策の水平展開を目指す。
今回の調査は、技能者への適正な賃金支払いの確保に関する先行事例を把握するもの。都道府県・政令市の実態を調べた。主な事例を見ると、入札・契約や工事の履行、工事完了時といったタイミングで賃金支払いを確認する手法が複数あった。
例えば宮城県は、工事の入札で施工体制事前提出方式(オープンブック方式)を適用。落札候補者に対して下請けも含めた詳細な工事費内訳書や、労務賃金調書の提出を求めているという。
公契約条例に基づく取り組みもあった。相模原市は予定価格1億円以上の工事に対し、労働状況台帳の提出を要請。下請けを含め、労働報酬下限額を下回っていないか確認する。
堺市は、落札候補者の入札価格が調査基準価格を下回った場合、現場労働者への賃金確保・支払い状況を確認する。
発注プロセスとは別途に抽出調査を行う事例もある。新潟市は市発注の工事で、業務に従事する労働者の支払い賃金の抜き取り調査を実施。賃金の平均額と公共工事設計労務単価を比較している。
鳥取県でも、年間500件程度の下請け契約を抜き出し、県の設計額と下請け契約額の比較調査を実施。低額な契約については元請け・下請けの双方にヒアリングし、必要に応じて助言・指導を行っているという。
元下間の契約について労務費が明示されていないため、積算内容の検証が困難だとの声も山形県から寄せられた。「受発注者の事務負担が大きい」(岡山県)、「人員体制の確保が困難」(島根県)という団体もあり、普及には事務負担の軽減が課題となりそうだ。
