価格決定力の弱い建設業 予算増額は利益確保の起点だ
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財務省の法人企業統計によると、建設業の2024年度の売上高経常利益率は5・4%となり、調査開始以降で最高を記録した。経常利益額や売上高も過去最高だという。確かに、物価が極端に上昇した21年度以降、価格上昇分を転嫁する制度は整ってきているが、中小建設業の実感として、本当に利益は確保できているのだろうか。
建設工事の請負契約は、契約後に物価や人件費が上昇しても価格を転嫁しにくく、建設業は構造的に価格交渉力の弱い産業とされている。重層下請け構造でもあるため、下請け次数が高くなればなるほど、その傾向は強い。人手不足で労務費も上昇している近年は、利益確保が特に厳しい局面にあると言える。
それでも利益率が過去最高を記録した背景には、民間建築で大手ゼネコンが価格上昇を織り込んだ受注を進めたことがある。中小建設業にとっても、公共工事でスライド条項などの価格転嫁対策が進んだことは好材料だろう。
ただ、過去最高の利益率と言っても、過去の建設業の業績と比較した結果にすぎない。他産業の売上高経常利益率を見ると、製造業は8・6%、情報通信業は9・9%、不動産業は13・6%となっており、建設業は全産業で4番目に低い。
コロナ禍で落ち込んでいた運輸業・郵便業の利益率も、すでに6・5%と建設業を上回っている。
生産性を向上しにくい一品生産であること、受注の繁閑を調整する重層下請けという産業構造があるものの、建設産業が持続的に発展し、施工力を維持することを考えると、改善に向かっている今の利益率も十分であるとは言えない。物価上昇に対応する価格転嫁と、受注機会の確保は利益確保の両輪だ。
11月28日、政府は2025年度補正予算案を閣議決定した。前年度補正を上回る公共事業費を計上したこの予算をまずは歓迎したい。一方、政府は年内に26年度当初予算案を閣議決定する。当初予算の公共事業費は、10年以上にわたって予算額が変わっていない。
価格上昇局面であるにも関わらず、横ばいの公共事業費によって、実質的な事業量が減少しているのは明らかだ。価格上昇分を反映した十分な公共事業費で受注機会を増やすことが、公共事業の受注比率が高く、価格決定力が弱い中小建設業の利益率改善のスタートラインになるはずだ。
