技能者賃金の通報システム 建設Gメン指導の参考に

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 国土交通省は、適正な賃金を支払われていないと感じる建設技能者から通報を直接受け付けるシステムを構築する。このシステムは、国・都道府県への相談窓口として機能するだけでなく、建設Gメンが事業者への取引適正化指導を行うか否か、判断するための参考情報としても活用する。2025年度補正予算案に、調査・検討のための費用を盛り込んだ。実際のシステム整備は27年度以降になると見られる。  改正建設業法に基づいて整備される「労務費の基準」に実効性を持たせ、末端の技能者まで適正に賃金が支払われることを担保する。発注者と元請け、元請けと下請けの間の請負契約で計上される労務費の適正性は、建設Gメンが把握・指導できるが、労務費が最終的に適正な賃金として支払われているかは、これまで確認する手段がなかった。そこで、賃金を受け取る技能者自身から処遇に関する情報を提供してもらう仕組みを構築する。  具体的には、自身の賃金支払いに疑問を持った際などに、任意で給与明細に記載された給与や労働時間などを通報受付システムを介して技能者に申告してもらい、許可行政庁が受け付ける。  相談を受けた国・都道府県は、寄せられた情報も踏まえ、建設Gメンが建設技能者の雇用主に対して指導を行うべきか否か判断する。建設Gメンは事業者の取引状況を調査し、必要に応じて是正の指示や指導、助言を行う。  改正法に基づく労務費の基準を検討する中央建設業審議会のワーキンググループでも、賃金支払いの実効性確保策として通報システムの構築が議論された。通報受付システムの運用については、許可行政庁だけでなく、中立的な第三者機関の関与を求める声もあった。こうした機関を活用する場合、国・都道府県との役割分担についてもさらなる検討を要する。  指導監督に当たっては、労働基準監督署や公正取引委員会など他の関係省庁との連携も検討事項とした。  最低賃金未満の支払いや賃金不払い残業といった、明確な法令違反に対しては、厚生労働省が相談・情報提供を受け付ける窓口を設けている。国交省が構築するシステムは、明らかな法令違反でなくとも、まずは賃金支払い実態を把握し、その上で指導の必要性を判断する仕組みとなる。改正法では労働者の処遇確保を建設業者の努力義務と位置付けており、技能者が能力・経験に見合った処遇を得られるよう、システムを活用しながら適正な賃金支払いを促す。