北区 3度不調の児相等複合施設 設計白紙、工事4年遅れ 

東京

設計が白紙になった児童相談所等複合施設のイメージ

 北区の児童相談所等複合施設建築工事が3度の入札不調を繰り返したことで、区は「施工難易度の高さが不調に直結している」と判断し、設計を白紙に戻す決断を下した。設計を担当したのは隈研吾建築都市設計事務所(港区)。2026年度に改めて設計業務の委託先を選定する。これに伴い、既に受注者が確定していた電気設備、空調設備、給排水衛生設備の工事契約を12月中に解除する。工事スケジュールは4年遅れる見通しで、順調なら28年度の工事着手と30年度の開設を目指す。  設計業務の委託先を改めて選ぶ方法や具体的な時期は決まっていない。今後、児童相談所を設計した経験がある設計事務所へのヒアリングを踏まえて調整する。また、建物の規模は大幅に変更せず、これまでの設計与条件を活用。施工性に配慮したシンプルで簡素なデザインを採用し、メンテナンス性が高く劣化しにくい建材を使うなどして建設費用を抑えたい考え。  当初の施設規模は鉄筋コンクリート一部鉄骨造4階建て延べ6887平方㍍。上層階に向かって広がる構造や吹き抜けを持ち、木材を使用した天井と壁、木目調の外装などが特徴的な意匠となっていた。  24年9月と12月の2度にわたる入札不調を受け、施工性の再検討やコスト縮減などを含めた修正設計を実施したが、25年6月に行った3度目の入札も参加者の辞退により不調となった。区は参加者に辞退の理由をヒアリングしたところ、「コロナ禍以降の工事発注量の増加や技術者不足で、施工難易度の高い工事の応札を見送る傾向にある」との状況を確認している。 ~工事契約解除は区初~  設備工事は契約締結から1年以上が経過している。設計のやり直しによる契約の解除は今回が初めて。国土交通省のガイドラインに基づき、施工体制を維持するために要した経費などを受注者に支払った上で月内に解除する。再度工事を発注する際のアドバンテージなどは特に設けないという。  区はこれまで、公共施設の新築工事は建築と設備を同時期に発注し、落札者が決定した工事は他業種が不調だったとしても先んじて契約を締結していた。入札不調が続いている最近の状況を考慮し、今後は建築工事の落札者が決まった後に設備を発注する方針だ。  設備工事を受注していたある業者は「初めての事例で困惑している。今後、同じような状況を起こさないためにも区と業者間の意思疎通をしっかりするべき」と主張する。さらに「北区では児童相談所等複合施設以外にも建築工事の不調が相次いでいる。最新の資材価格や労務費を反映した適切な積算と予算の確保を徹底し、人材不足で辞退せざるを得ない業者の状況を考慮した上で入札を実施してほしい」と話す。  建設予定地は赤羽台1ノ1ノ13の旧赤羽台東小学校跡地。