適正賃金支払いの条項新設 標準請負契約約款を改正
中央
国土交通省の中央建設業審議会は、第3次担い手3法の全面施行に合わせ、契約書のひな形である建設工事標準請負契約約款を改正する。「労務費の基準」に基づく請負契約のルールに実効性を持たせるため、労務費・賃金の適正な支払いを契約当事者間で約束する「コミットメント条項」を追加する。資機材価格などの変動を円滑に転嫁できるよう、契約変更協議の条項も新設する。
コミットメント条項は、公共工事と民間工事、元下契約で使用する標準約款に、当事者の任意で使用する「選択条項」として盛り込む。
条項を盛り込んだ契約では、受注者が注文者に対し、自社が雇用する技能者への適正な賃金支払いと、下請け事業者への適正な労務費支払いを約束する。合わせて、注文者の求めに応じ、賃金・労務費の支払い状況を書面で示すことも規定する。発注者の支払った労務費が、末端の技能者まで行き渡っていることを担保できるようにする。
受注者の負担を軽減するため、賃金支払いの情報を開示する際は賃金台帳ではなく、誓約書の提出を求める。労務費支払いの情報開示では、下請け契約書の写しを提出することとした。
下請け契約でも、同様のコミットメント条項導入を約束することを基本とし、賃金・労務費支払いと情報開示の規定を重層下請け構造の中で貫徹させる。ただし、状況に応じて発注者・元請け間や元請け・一次下請け間など、契約当事者の間だけで個別にコミットメント条項を導入する条文も整備。可能な範囲でコミットメントに取り組めるようにする。
第3次担い手3法への対応ではこの他、材料費や労務費を内訳明示した見積書を作成する努力義務規定が新設されたことを受け、標準約款でも請負代金内訳書で内訳明示すべき項目に材料費、労務費、安全衛生経費、建退共掛金を追加する。
改正法で、資機材価格などの高騰時の価格転嫁の円滑化ルールが整備されたことを受けた見直しもある。契約変更請求ができるケースとして、「主要な資材の供給の著しい減少」「資材価格の高騰」を追加。
契約変更を求めた場合、相手方に協議を求められることを明確化するとともに、協議の申し出を受けた者は誠実な対応に努めることとした。請負代金額の変更に当たっては、適切な価格転嫁により適正な代金が設定されるよう、価格変動を考慮することも盛り込んだ。
公共約款では、直轄工事で前払い金を現場管理費・一般管理費に充てられる特例が恒久化されたことを受け、前払金の使途に関する規定を変更。また、公共発注者が他機関の発注工事と必要に応じて調整することを明確化する規定も新設する。受発注者で協議が不調となった際、不利益な取り扱いを禁止する規定も設ける。
