CCUSレベル別年収改定案 「標準」未満はダンピングの恐れも

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 国土交通省は、公共工事設計労務単価が賃金として支払われた場合に想定される技能者の年収を、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルごとに示す「CCUSレベル別年収」の改定案をまとめた=表。「労務費の基準」の作成に伴い、建設業法上の指導につながる基準として活用する。雇用する技能者に支払っている年収が「標準値」を下回る事業者には、発注者や元請けなどとの請負契約で労務費をダンピングしていないか、重点的に確認する。  全国・全分野平均のレベル別年収は、▽レベル1=標準値385万円~目標値523万円▽レベル2=420万円~587万円▽レベル3=444万円~645万円▽レベル4=550万円~719万円―となる。  12月4日に開いたCCUS処遇改善推進協議会で改定案を示した。12月12日の改正法全面施行に合わせて正式に公表する。  2023年に作成した現行のレベル別年収は、技能者に将来のキャリアパスを示す目安と位置付ける。今回、建設業法の改正を受け、位置付けを強化する。  レベル別年収は、各レベルの平均以上の「目標値」と、下位15%程度の「標準値」を設定。適正な賃金として目標値以上の支払いを推奨するとともに、標準値を下回る支払い状況の事業者に対しては、請負契約で労務費ダンピングの恐れがないかを確認する。  また、これまでは全国一律で設定していたが、今回は全国9ブロックに細分化。技能者のCCUSレベルが設定された住宅建築関連や土質改良、解体など11分野を追加し、合計43分野とした。  見積もり、契約時の労務費については建設業法に基づく基準を設けた一方で、下請けが技能者個人に支払う賃金そのものに法的な拘束力をかけることは難しい。レベル別年収の活用に加え、適正な労務費・賃金支払いを契約当事者間で表明する「コミットメント条項」の標準請負契約約款への導入や、技能者賃金に関する通報制度の整備と合わせ、適正な賃金支払いの実効性を確保する。  協議会の開会に当たり、国交省の楠田幹人不動産・建設経済局長は、労務費の基準が2日に勧告されたことを受け、「これを契機にダンピングによる受注競争を撲滅し、適正賃金を確保した上で、それ以外の要素で競争することが求められる」と述べ、商慣行の転換を訴えた。  協議会長の蟹澤宏剛芝浦工業大学教授は、レベル別年収の位置付けが強化されることを踏まえ、「いよいよCCUSがなくてはならないことを理解してもらえると思う」と発言。能力評価の重要性を指摘した。  協議会では、参加した建設業者に対して労務費を内訳明示した見積書での価格交渉や、CCUSレベルに応じた適正賃金の支払いを要請。発注者に対しては、労務費を減額する行為が法違反になり得ると呼び掛け、適正な労務費支払いを求めた。