水嶋国交事務次官 労務費確保の新ルール、定着の1年に 国土強靱化「戦略的に投資する」

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 2026年が始まった。昨年末に全面施行した第3次担い手3法に基づき、技能者の労務費・賃金を確保する新たな請負契約のルールを本格運用する年となる。人口減少により将来の担い手が減る一方で、災害の頻発化・激甚化に伴って事前防災・災害復旧を担う建設業界の役割はますます重くなる。「『地域の守り手』の確保・育成に向けて、処遇の改善、働き方改革、生産性向上に取り組む」と話す水嶋智国土交通事務次官に、今年の展望を聞いた。  ―第3次担い手3法が昨年末に全面施行しました。労務費確保の商慣習を、どのように定着させるのでしょうか。  「担い手の確保に向けて、技能者の処遇確保が非常に大事だ。全産業平均と比べると、改善してきたとはいえ建設業界はいまだ低い状態にある。改正法に基づき、労務費をしっかり確保していくことが重要になる。建設業が地域の守り手として、将来にわたって重要な役割を果たしていけるようにする上で、今回の法改正は極めて重要な意義を持つ」 ■サプライチェーン全体で意識改革を  「改正法の円滑な運用には、ステークホルダー(関係者)の意識改革とコミットが欠かせない。官民の発注者や元請け、下請けの建設業者など、さまざまな立場からの理解と実践が必要になる。新しいルールの普及啓発活動を重点的に進める」  「関係者への周知や、労務費を内訳明示した見積書の活用促進、建設Gメンによる調査指導を通じた実効性の担保などに官民一体で取り組む」  ―25年度補正予算で、第1次国土強靱化実施中期計画の初年度分の事業費が措置されました。  「わが国がさらなる経済成長を実現するためにも、国土強靱化対策によるリスク対応について、先手を打った戦略的な投資が必要になってくる。気候変動で災害は頻発化・激甚化しており、地震災害の切迫感も増している。老朽化したインフラ問題も顕在化してきた」  「昨年に決定した第1次国土強靱化実施中期計画に基づき、防災・減災、国土強靱化対策を継続的、計画的に進める。その際、資材価格や人件費の高騰といった影響を考慮し、適切に価格転嫁して事業量を確保することが重要だ」 ■群マネ、新技術活用で自治体支援  ―昨年に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故は、社会に大きな衝撃を与えました。インフラの老朽化にどう向き合うべきでしょうか。  「重大な問題として、インフラを管理している基礎自治体で、特に技術系の職員の人手不足が深刻化している。だが、人手が足りなくともインフラのメンテナンス水準を落とすわけにはいかない」  「このために生まれた工夫が『地域インフラ群再生戦略マネジメント』だ。複数の自治体のインフラや、分野の異なる複数のインフラをまとめて効率的・効果的にマネジメントする。先行事例のノウハウをまとめた手引き書もまとめた。これを参考にしてもらいながら、群マネを全国に展開させる」  「特に自治体では、新技術を活用した維持管理業務のノウハウが不足しがちだ。専門家を派遣し、自治体を支援できないかということも検討している」  「インフラの存在は普段、意識されないが、ひとたび事故が起きると市民生活にとても大きな影響が生じ、復旧にも多額のコストと時間がかかる。昨年は、老朽インフラをどのように保全していくのか、国民の意識が相当に高まった1年間となったのではないか」 ■現場で働く人の安全を最優先に猛暑対策を  ―昨夏の猛暑は、建設現場で働く人たちにも大きな負担となりました。対策の手立ては。  「昨年のような猛暑は、恐らく今後も毎年、繰り返される。気候変動により、夏の現場の作業環境が過酷なものになることが、常態化するのではないか」  「ただでさえ、担い手不足が課題とされている中、こうした作業環境の改善に真剣に取り組まなくてはならない。国交省としても、直轄工事の発注者として、猛暑日を考慮した工期設定や遠隔施工を活用した施工環境の改善に取り組む」  「さらに、現場で働く人の安全を最優先とするためにも、猛暑の時間帯や期間を避けて施工できる環境を整える。どうしても猛暑の時期に施工しなければいけない場合は、しっかりと熱中症対策を講じ、必要なコストを適切に計上する。元請けだけでなく専門工事業の意見も聞き、土木と建築の違いも踏まえながら対策を講じる」  「労働者の命、安全を守るために、工期やコストを受け入れられるようにすることが社会的に重要になる。直轄事業で行ったことを自治体、あるいは民間事業で実施していくには、どうしてもタイムラグが生じる。国の取り組みを、他の発注者にも迅速に広める必要がある」 ■ベストプラクティスの輪を広げる  ―27年には、育成就労制度がスタートします。受入人数の多い建設業を所管する省として、どのように準備を進めますか。  「建設分野でも国内人材の確保や生産性向上に取り組んでいるが、それでもどうしても技能者の不足が生じる。育成就労、特定技能の両制度により、『秩序ある共生』を実現することが求められる」  「『外国人材とつくる建設未来賞』の表彰制度などを通じ、業界全体にベストプラクティスの輪を広げ、優良事例を横展開する」  「建設技能人材機構でも、外国人材に日本の文化、マナーに関する教育や医療にアクセスするサポートなど、生活面の支援を充実させるとともに、地域社会との連携に取り組むと聞いている。建設業界、各省庁とも連携し、外国人材を円滑・適正に受け入れる」  ―建設業界にメッセージをお願いします。  「建設業は社会資本整備の担い手であり、地域経済や雇用を支える役割を担う。災害対応、インフラ老朽化対策の観点からも社会的に重要な役割を担っている産業だ」  「担い手の確保、育成に向けて処遇改善や働き方改革に、国交省として引き続き取り組む。建設業界と一体となり、官民で力を合わせて国土強靱化を推進していく」