「富岳館のビオトープを世界遺産に!」 生徒7人が地元建設企業の協力受けビオトープ改修
静岡
「富岳館のビオトープを世界遺産に!」との目標を掲げ、県立富岳館高校が1年を通じ校内のビオトープを改修した。これまで卒業生がビオトープ改修に乗り出してきたが、その後手入れされることなく、放置されている状態が続いた。状況を打破するために、同校工業テクノロジー系列に在籍する生徒7人(篠田陽彩さん、八木飛成さん、村松息吹さん、宮原魁良さん、星谷幸之助さん、和田琉太郎さん、坪井琉多さん)が立ち上がり、地元建設企業の協力も仰ぎながらビオトープ再生を行った。「自分たちが卒業する前に在籍した証しを残したい」と意気込む、生徒たちの取り組みを追った。
取り組みは、同校3年生のカリキュラムである課題研究の一環として進められてきた。ビオトープを「より豊かな生態系を形成し、人の憩える場所」に変えるべく、園内に設けられた池と川の改修から着手。「現状では池しか機能していなかったので、川の機能を再生したかった」と、DRONE★VILLAGE(富士市、望月紀志代表)の指導の下、川の計測や適切な施工方法などについてアドバイスを受けながら生徒主体で改修準備を行った。剣スコップやツルハシを使用した河川の造成は序盤、難なく進めてきたが、掘り進めていくにあたり、前工事の残骸や固い溶岩石・粘性土が搬出されるようになり、人力での掘削作業を困難なものとした。そんな状況を耳にした藤島組(富士市、遠藤公芸社長)が、ハンマードリルを学校に寄贈。その結果、大幅に作業効率が向上し、工期短縮につながったという。また、生徒や来校者がくつろげるスペースを確保するため、既存池の縮小を図った。河川改修で発生した掘削土砂を埋め戻すことで池の面積を削減。仕上げに砕石を敷きならし、プレートで転圧作業を行い完成させた。
未舗装のビオトープに人工芝の貼り付け作業に取り組んだ。当初、天然芝の施工を視野に入れていたが、エムズの村松直樹社長(富士市)の助言もあり、維持・管理が容易な人工芝への施工を決定。生徒たちは炎天下の中、村松社長の指導のもと、貼り付け作業にいそしんだ。人の憩える空間にするのはもちろんだが、芝の一部を加工し、富士山のモチーフを加える工夫を凝らした(芝の富士山は「富岳山」と命名)。また実習の残りのタイルを使って、富士山を模した「富岳山MAX」もシンボルとして設置している。
活動のリーダーとして生徒たちをまとめた篠田さんは、「無事故・無災害で施工が完了するように安全施設の設置や作業前のKY活動を行った」と安全第一の施工を進めてきたことを振り返る。また「どうしたら安全かつ効率的に作業を進めることができるかを一人一人が考え、行動することで、『仲間と協力してモノを作る苦労や楽しさ』を実感できた」と笑みをこぼす。
2026年3月で学校を卒業する7人にとって、仲間や地元建設企業の協力の下で作り上げたビオトープは思い出深いものと考えられる。そんな経験をした生徒たちは、仲間と協力してモノを作り上げる楽しさや、問題に直面した際、試行錯誤し軌道修正する力、また事業に携わった大人への感謝の気持ちなど、体験を通して得た経験は大きい。生徒たちにとって、学校生活では学ぶことができない時間だったのではないだろうか。
