解説 労務費の基準(2) 基準値初弾は13職種99工種 競うのは労務単価でなく歩掛
中央
改正建設業法に基づく「労務費の基準」は、具体的な労務費の金額を示すものではない。公共・民間工事を問わず、「公共工事設計労務単価×施工条件に合った歩掛×施工量」で適正な労務費を算出するという基本的な考え方をまとめたものだ。13職種99工種で示された「労務費の基準値」には具体的な金額が盛り込まれたが、現場条件に応じて調整する必要がある。基準・基準値を参照しながら、労務費を内訳明示した見積書を作ることが、価格交渉の第一歩となる。
改正法により、全ての建設業者には労務費を内訳明示した見積書の作成が義務付けられた。改正法が施行した12月12日以前に契約した工事であっても、変更契約で施行後に見積書を交付する場合は内訳明示が必要だ。
このとき、「労務費の基準」を踏まえて適正な労務費を計算する必要がある。算出に用いる公共工事設計労務単価は、工事の施工場所が位置する都道府県の値を使用することが適当となる。
■現場条件に応じて歩掛を見直し
価格交渉を円滑化するため、国交省と専門工事業団体などが単位施工量当たりの労務費を示す「基準値」を整備した。初弾は▽型枠▽鉄筋▽住宅分野▽左官▽電工▽とび▽空調衛生▽土工▽潜かん▽切断穿孔▽橋梁▽警備▽造園―の13職種99工種(当初見込んでいた14職種のうち、鉄骨は引き続き調整)で、「労務費の基準」のポータルサイトから確認できる。引き続き12職種で意見交換を進めており、この他の職種も準備が整えば順次、基準値を公表していく。
基準値は、標準的な作業内容・施工条件を前提としており、全ての現場にそのまま適用できるわけではない。直轄工事の歩掛を準用しているため、小ロット工事など歩掛の悪い工事では高い労務費が適正となる。逆に、施工条件の良い工事では基準より安い労務費であっても、必ずしも法違反の「著しく低い労務費」とはならない。
施工条件が同一でも、新技術・工法の導入により歩掛が改善すれば、基準値より安い見積もりも可能となる。ただし、建設Gメンや注文者にその歩掛を設定した理由を説明できなければならない。
■労務単価部分の引き下げは「不適正」
労務単価部分に注目すると、高い技能を持つ技能者が必要な工事や、技能者のひっ迫状況などを踏まえ、基準値より高く設定して見積もることは問題ない。重要なのは、労務費のうち歩掛部分は適宜見直す必要がある一方、労務単価部分を引き下げることは認められないという点だ。
下請けの主任技術者など、施工管理を一部担っていても、施工に従事する技能者の労務費は見積もり対象となる点にも注意する必要がある。
