適正労務費の支払い要請 法改正踏まえて盆暮れ通達

中央
 国土交通省は12月16日、適正な下請け契約と代金支払いを求める〝盆暮れ通達〟を建設業団体121団体に発出した。改正建設業法の全面施行を受け、原価割れ契約や著しく低い労務費による見積もり・変更依頼の禁止の順守を要請。新たに勧告された「労務費の基準」を踏まえ、適正な労務費・賃金の確保と支払いを求めた。「建設Gメン」の用語も初めて明記した。  盆暮れ通達は、資金需要が増す夏季・冬季の年2回、不動産・建設経済局長名で送付している。  改正建設業法により、材料費や労務費、必要経費を内訳明示した「材料費等記載見積書」を作成する努力義務が新設されたことに留意を求めた。労務費だけでなく、材料費やエネルギーコストを含めてサプライチェーン全体で価格転嫁させることが経済の好循環に必要だとも記載し、対応を促した。  適正な労務費・賃金を支払う建設業者が評価される環境整備に向け、契約の相手方を選ぶ際、新設した「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」を考慮することも求めた。  社会保険の加入が建設業許可・更新の要件となってから5年がたったことを受け、加入率がほぼ100%になったことも記載。社会保険未加入対策を後戻りさせないため、下請けに適正な業者を選定するよう求めた。  近年、建設工事の請負契約で発生した代金未払いなどのトラブル事例を踏まえ、契約締結時の留意点の記載も拡充した。一般的には元請けの方が「取引上の立場が強い」とし、下請けから契約書面を取り交わすことを申し出にくい実情を踏まえ、元請け側から適切な内容の契約書面を提示することが望ましいとした。  2026年1月に施行する改正下請法(取適法)を踏まえた対応も追加した。取適法で設計や建材の製造といった委託先への手形交付と、銀行口座の振込手数料を差し引くことなどが禁止されたことを受け、適用対象外ではあるものの建設工事の請負契約でも留意するよう求めた。取適法で下請けの呼称が「中小受託事業者」に見直されことにも留意するよう呼び掛け、建設工事の請負契約でも下請けを「協力会社」「パートナー」に言い換える動きがあることを紹介した。  改正法の内容を踏まえ、建設工事標準請負契約には適正な労務費・賃金支払いを表明するコミットメント条項が規定されたことを受け、請負契約の締結に際して積極的な導入を促した。  通達した事項を徹底するため、建設業者の「駆け込みホットライン」を拡充し、ウェブ上に情報収集フォームを新設したことも紹介。提供された情報を参考に、「建設Gメン」が処遇改善に取り組むことを初めて明記した。