【SBSラジオで紹介!】富士砂防事業展望特集 光永健男所長に聞く

静岡

大沢崩れと大沢川遊砂地

 ―2025年度補正予算について。  富士砂防事務所は2025年度補正予算で事業費16億2000万円を計上しました。内訳は富士山火山砂防事業費に12億2500万円(南西麓地区11億5500万円、北麓地区7000万円)、由比地すべり対策事業に3億9500万円です。  富士山火山砂防事業では、富士山を源流とする各渓流において、「流域治水」の一環として、火山噴火や降雨に起因する土砂災害対策のため、砂防施設の整備および機能の維持・向上を促進します。また由比地すべり対策事業では、JR東海道本線、国道1号、東名高速道路など東西を結ぶ重要交通網が集中している静岡市清水区の由比地区(サッタ山)において、豪雨や東海地震等による大規模地すべりの発生を未然に防ぐために深礎工の整備などを促進します。これらの工事を行うに当たって、25年度補正予算と26年度当初予算を用いた国債工事としての発注を行うことで、適切な規模での発注や工事の平準化に努めてまいります。  ―富士山火山砂防事業について。  補正予算では、静岡県側の南西麓地区では、風祭上流第2堰堤工群(風祭第3砂防堰堤、風祭第5砂防堰堤)、角木沢堰堤、揚久保沢堰堤(揚久保沢渓流保全工)、千束第3堰堤工群(千束第7砂防堰堤)の整備を促進するとともに、富士砂防管内砂防施設改築として大沢遊砂地工内に堆積している土砂の除石を行います。  山梨県側の北麓地区では、北麓遊砂地工群(浅間沢遊砂地工)の整備を促進します。  気候変動の影響による災害の激甚化・頻発化が懸念され、何時豪雨が発生するとも限りません。富士山も、何時噴火が起こるか分かりません。関係機関との連携を深めてソフト対策の充実を図るとともに、ハード対策を推進していきます。ハード対策については、施設の新設のみならず、施設の機能の維持・向上にも努め、大沢崩れ下流の大沢遊砂地などの堆積土砂の除石も継続し、掘削土の有効活用を進めていきます。  ―由比地すべり対策事業について。  地すべり対策には、大別して、地すべりに大きな影響を及ぼす地下水の水位を下げてその動きを緩和もしくは停止させる「抑制工」と、構造物の持つ抵抗力を利用して地すべりの動きの一部もしくは全部を直接止める「抑止工」とがあります。由比では、地すべりの規模が大きいため、集水井工や排水トンネル工、横ボーリング工といった「抑制工」を先行して実施してきました。その結果、24年の台風10号の際などにも地下水位の上昇が抑えられていることが確認されています。現在は、「抑止工」の1つである直径5㍍の鉄筋コンクリートの杭を地中に建設する“深礎工”が中心となっており、何本もの深礎工が施工中です。  補正予算では、蜂ケ沢ブロックにおける深礎工の整備を促進するとともに、地すべり末端部の斜面対策を進めていくための工事用道路の整備を行います。  地すべり末端部の対策は、たとえ大規模な地すべりが発生しなくとも、地すべり末端面の崩壊が進むと地すべり全体の安定性が損なわれる可能性があること、末端部の表層崩壊でもJR東海道本線などへの土砂流出の可能性があること(22年の台風15号の襲来の際には末端斜面において多くの表層崩壊が発生した)から実施するものですが、本格的に末端斜面対策に取り掛かるに先立ち、工事用道路の整備を行うものです。  ―i―Constructionの実施状況は。  富士砂防事務所では、昨年度に発注された砂防工事15現場のうち10現場がICT活用工事として実施されました。UAVなどで起工測量から得た3次元データを活用した、ICT土工、3次元計測技術を用いた出来形管理などを実施して、効率化、工期短縮、危険の軽減につながっています。  事務所では11月28日に富士建設業協会の建設関係技術者や市職員を対象としたBIM/CIM講習会を開催しました。3年連続しての開催となりましたが、今回は39名の方に参加いただきました。現場測量作業などを協力会社に依頼しているなど各社の取り組み状況に差があり、一日の講習会では出来ることが限られていることから、今後の実施内容は工夫しなければならない部分もあると感じましたが、この流れは止まりませんので、まずはBIM/CIMがどのようなものかを体感してもらうことが必要かと思っています。  由比地すべり対策事業では、施設の多くが地中に設置されて目視出来ないことから計画作成の際にもBIM/CIMを活用していますが、深礎杭の施工の場面でも、施工場所が狭いことから詳細な仮設計画のイメージを持つため、あらかじめCIMを活用した仮設計画を検討したり、深礎杭の配筋の干渉チェックを行ったりするなど先進的な取り組みが行われています。  引き続き調査・計画・設計・施工・維持管理の各段階において積極的にBIM/CIMを活用し、生産性の向上、品質の確保、安全管理の向上を図っていくとともに、ICT土工技術の普及に取り組みます。  ―地元企業に期待すること。  災害発生時、地元企業による復旧作業などへの協力は必要不可欠です。建設業協会などとの連携を密にし、地域の安全・安心の確保に向けた取り組みを進めていきたいと考えています。そのため当事務所では、管内の建設業者などを対象に、昨年度に引き続き、今年度も無人化施工バックホウ(簡易遠隔操縦装置「ロボQS」装着バックホウなど)を用いた操作訓練や見学会(12月15、16日)を開催しました。今回は、無人化施工バックホウを用いて導流堤も建設してもらいました。富士山噴火に際しては、立ち入り禁止区域の設定が想定されるなど、無人化施工重機を用いるケースも想定され、その活用が欠かせないと考えています。地元企業の皆様が無人化施工重機による施工に携われる場をつくっていきたいと思っています。  次に、地域建設業の活性化のために、前述のBIM/CIMなどを活用した生産性の向上などを通じて、若者に支持され地域の基幹産業として安定的に担い手を確保できる働きやすい建設産業の実現を目指していただきたいと思います。  最後に、近年の集中豪雨などを考慮した施工計画を立て一般被害を発生させず、交通事故も含めて事故の無い施工をお願いしたいと思います。これらに対しては、発注者・受注者一体で取り組んでいきたいと思っています。引き続き宜しくお願いします。 【富士建設業協会と意見交換】 富士建設業協会(井上有之会長)と意見交換会を行いました。同協会から、地域の実情を踏まえた工事発注や、富士山噴火に伴う降灰、土石流などに関わる災害対応、BIM/CIM研修の実施、出前授業で使用する教材等の貸し出しなどについて記載された要望書を受け取った他、富士・富士宮市地区の建設業活性化に向けて意見を交わしました。 【無人化施工バックホウ見学会】 大沢川遊砂地で無人化施工バックホウの見学会を開催しました。見学会では、会場である大沢川遊砂地や無人化施工、簡易遠隔操縦装置「ロボQS」について説明。また富士設計(富士宮市)の協力のもと、UAV自律飛行による模擬点検を実施しました。 【由比地すべり子ども見学会】 富士砂防事務所、静岡県、静岡市の3者が連携して「由比地すべり子ども見学会」を開きました。当日は、由比地すべり管理センターを見学した後、山中排水トンネルや深礎杭工事現場といった地すべり対策施設を見学。地すべり対策事業の重要性と建設業の魅力を伝えました。 【BIM/CIM演習】 建設関係技術者を対象とした「BIM/CIM演習~ICTを活用した技術体験~」を開催しました。講習会は午前・午後の2部構成で行い、午前中は事務所内で座学講習を実施。午後は大沢川扇状地に移動し、ICT機器を使用したAR投影による出来形管理や3次元測量を実演しました。