ニュースで振り返る2025年 インフラ老朽化に猶予なし

中央
 2025年はこの先の社会資本整備と建設業にとって、転換点の1年となるかもしれない。1月28日、埼玉県八潮市の下水道破損を原因とする道路陥没事故=写真=は、インフラの老朽化問題が、すでに一刻の猶予もないことを社会全体に突きつけた。6月には「第1次国土強靱化実施中期計画」が閣議決定。法定計画に沿った国土強靱化政策がスタートした。深刻な担い手不足が続く建設業でも、賃金の原資獲得を前提とする新しい商習慣である「労務費の基準」の運用が始まった。 ■八潮市道路陥没がもたらした衝撃  1月28日、八潮市内を走る県道直下の下水道管が老朽化によって破損し、道路陥没が発生した。発生からの3日間で陥没は幅30㍍、深さ10㍍まで拡大し、下水道管の破損に起因する陥没としては過去最大級の規模となった。  周辺に大規模な下水道の使用自粛を迫ったこの重大事故を受け、国土交通省は下水道管路を対象とする全国特別重点調査の実施を決定。地方自治体の調査で緊急度の高い下水道管路に対する対策工事に加え、管路点検の高頻度化、大口径管路の多重化・分散化、下水道管理の広域連携を推進する方針を決めた。  八潮市の道路陥没は、2012年12月に発生した笹子トンネル天井板崩落事故以来となる、インフラの老朽化が招いた重大事故だ。自治体の技術職員不足も顕在化しており、インフラ管理の持続性が問われる、大きな衝撃をもたらした。 ■「20兆円強」の計画が始動  第1次国土強靱化実施中期計画は、6月6日に閣議決定した。26年度から5年間の事業規模は「おおむね20兆円強」。初年度の事業費は12月16日に成立した25年度補正予算に計上され、公共事業費には国費1兆5500億円を計上した。  実施中期計画は、5か年加速化対策の後継として、国土強靱化基本法改正から2年をへてまとまった。初めての法定計画に対する業界の期待値は高かったが、公共事業費は加速化対策の初年度分(1兆6500億円)を下回った。ただ、25年度補正予算全体で見ると、公共事業費は2兆6148億円となり、前年度の補正予算を11・2%上回っている。国交省分の公共事業費も補正予算として初めて2兆円を超えるなど、大型の補正予算となっている。 ■夏季の猛暑 働き方見直しの契機に  記録的な猛暑となり、調査開始以降最多の死傷者(休業4日以上)が出た24年夏季を教訓として、厚生労働省は職場での熱中症対策を企業に義務付ける労働安全衛生規則を改正し、6月1日に施行した。  ただ、今年6~8月の全国の平均気温は前年を上回り、統計開始以降で最高を記録した。記録的な猛暑は、建設現場の働き方を見直す議論へと発展。作業効率の低下を理由に、夏季の労働時間を減らし、それ以外の時期に労働時間を振り分ける柔軟な働き方を求める声が強まっている。10月に就任した高市早苗首相が労働時間規制の緩和を検討するよう、厚労省に指示しており、26年の動向にも注目が集まる。  国土交通省は12月23日、来夏に備えた「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」を公表。猛暑期間・時間の作業回避、効率的な施工、作業環境の改善、猛暑対策の必要経費確保などの対策を講じる方針を打ち出している。 ■新たな価格交渉ルールの運用開始  24年6月に成立し、段階的に施行されてきた改正建設業法が、12月12日に全面施行された。中央建設業審議会が勧告した「労務費の基準」では、基準を著しく下回る労務費での見積もりや契約を禁止。標準的な施工条件・作業内容で単位施工量あたりの労務費を示した、職種別の基準値も初弾の13職種が公表されている。  建設業者には、材料費、労務費、法定福利費(事業主負担分)、建退共掛金、安全衛生経費を内訳明示した見積書を作成する努力義務が課され、建設Gメンが違法な減額がないか確認する。国交省は、労務費の基準を踏まえた新たな価格交渉ルールを周知するため、年明け2月まで全国で説明会を開いている。