クローズアップ 岐阜県内でも進むAI交通誘導
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外国人ドライバーにも分かりやすい表記
道路工事などに伴う交通規制で、一般の通行車両や歩行者の安全を守る交通誘導員の人手不足が深刻化している。特に工事が集中する時期には人員の確保が非常に困難になっており、発注者や施工者も対応に苦慮しているのが現状だ。この状況を受け、岐阜県内の建設現場でもAIによる交通誘導システムが導入され始めている。昨年10月から同システムでの交通誘導を開始した下呂市内の道路工事現場を取材した。
AIを活用した交通誘導システム「KB―eye」の運用が始まったのは、国土交通省高山国道事務所発注の「41号井戸ノ洞地区道路整備工事」。交通量の多い国道41号の下にボックスカルバートを横断敷設する工事で、延長約150㍍区間で片側交互通行規制を敷いている。区間内に小学校の入り口がある他、時期によっては終日規制になることから、従来の警備員のみの規制であれば、交代要員も含めて昼間6人、夜間4人の交通誘導員が必要な現場だ。
同現場で監理技術者を務める野中達司さん(金子工業)は、以前担当した現場で交通誘導員の確保に苦労した経験から、同システムを使用した交通誘導を発注者に提案、了承を取り付けた。当初は通常の必要人員を配置した上でテスト運用し、その後、本格運用を開始。従来の人数の約50%の人員削減を実現した。
野中さんは「工事の繁忙期になると、都心部から離れた地域では特に交通誘導員の確保が困難になる。県外から来てもらうこともあるが、宿泊費や交通費など、コスト的に負担が大きくなる」と話す。
国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録されているこのシステムは、AIが全体の安全性・円滑性を判断し、区間の両端に設置したLED表示板で通行車両を誘導する。民間資格を持つオペレ―タ―の配置は必要だが、両端は無人となるため、省人化と誘導員の安全確保に大きなメリットがある。
同現場で警備業務を担当するサンライズ(岐阜市)は、県内の警備会社で初めて「KB―eye」を導入したという。同社の野口明義社長は「交通誘導員が事故にあうリスクを減らせるのが最大のメリット。また、削減した人員を他の現場に派遣できるため、受注機会を拡大できることも大きな利点」と語る。実際、建設企業からの引き合いや問い合わせも増えているようだ。
飛騨高山地域や下呂地域を管轄する高山国道事務所も、同システムの普及に期待を寄せる。管轄地域は山間部での道路工事が多く、現道工事での仮設費の占める割合が他地域に比べて高くなる特徴がある。同事務所管理第二課の中矢剛課長は「仮設費は交通規制に関わる経費が大半を占める。ここを圧縮できれば、実施が必要な工事量を増やすことができる」と分析する。
こうした背景から同事務所は2024年に「KB―eye」の実証(施工・坂本土木、交通誘導・日綜警備)を実施。これまでに、今回の工事を含めて計7カ所(飛騨市内6カ所、下呂市内1カ所)の現場でシステムを取り入れており、今後も積極的に推進していく方針だ。中矢課長は「導入できそうな現場では、建設業の皆さんからの積極的な提案をお願いしたい」と話す。
AIによる交通誘導システムを扱う警備会社は県内ではまだ少ない。コスト面など課題は残るものの、必要なインフラ整備が円滑に進むよう、さまざまな現場で導入されることを期待したい。
