労務費基準下回る取引類型化 建設Gメンの調査踏まえ事例集
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国土交通省は、「労務費の基準」に照らし、必要な労務費を著しく下回る恐れのある取引を示す事例集をまとめた。注文者(発注者や元請け、上位下請け)と受注者の見積もりを巡るやりとりで、建設Gメンがこれまでに「改善が必要」と判断した事例を6パターンに整理。建設業法に基づく指導や監督の可能性があるとし、建設業者や発注者の参考としてもらう。1月5日付で建設業団体と官民の発注者に送付した。
基準に基づく「通常必要と認められる労務費」は、公共工事設計労務単価に適正な歩掛を乗じることを基本とする。実際に特定の労務費が法違反と見なされるかどうかは、必要額をどれほど下回っているかだけでなく、乖離(かいり)が発生した理由や、請負契約の当事者間の取引実態を踏まえて判断されることになる。不適正とされる取引を事例集で示し、事業者に適正な交渉を促す狙いがある。
事例の類型を個別に見ると、公共工事設計労務単価が13年連続で上昇している中、数年単位で見直していない労務単価を適用することは「単価を見直さない据え置き」に該当するとした。長年取引関係のある注文者と受注者が数年にわたって労務単価に関する協議の場を設けていなかったり、初顔合わせの取引でも用いる労務単価が数年単位で見直されていない場合は、適正額を著しく下回る恐れがあるとした。
また、適正な労務費を踏まえた見積もりに対し、合理的理由や根拠なく一定の比率を乗じて減額したり、端数調整により減額すると「一律一定比率等の減額」に該当する。
「予算額を前提とした指値」は、注文者が設定した予算額に見積もり総額を合わせるため、逆算して根拠の乏しい経費を計上するような事例を想定。注文者が請負代金を指定して施工できる者を募集することは問題ないが、その場合もあらかじめ労務費などを内訳明示した見積書を徴収し、予算を確保することが望ましいとした。
「相見積もり等を基にした指値」は、注文者が複数の建設業者から徴収した見積もりのうち、最安値の見積額で請け負うよう、最安値の提出者以外の建設業者に減額変更を依頼する場合が該当する。
受注者が特定の注文者との関係構築を狙ったいわゆる「お得意様価格」を設定したり、閑散期の受注のための値引きを行うことは問題ないが、その場合も自社の利潤を原資とする必要がある。値引きに伴って適正な労務費を減額すると「取引関係維持等を意図した減額」に該当し、指導・監督などの対象となる恐れがある。
労務費の構成要素のうち、労務単価部分については公共工事設計労務単価水準を満たせば適正とされるのに対し、歩掛部分については現場の状況を踏まえた設定が必要になる。「工事条件を考慮しない価格設定」では、あらゆる工事で常に同じ歩掛を用いたり、実現困難な歩掛を設定する事例が該当する。
