四国MEの会が発足10周年記念シンポ 地方のインフラメンテナンスと四国MEの果たす役割について考える

四国

愛媛大学南加記念ホールで開かれた四国MEの会10周年記念シンポ パネルディスカッションの様子

 愛媛大学が養成する四国のインフラメンテナンスを支える技術者「四国ME(メンテナンスエキスパート)」で構成する四国MEの会(片山直道会長)と愛媛大学防災情報研究センター(木下尚樹センター長)は1月9日、「四国MEの会10周年記念シンポジウム~地方のインフラメンテナンスを考える~」を大学構内で開催した。四国4県をはじめ、岐阜県や山口県など四国内外から約120人が参加し、発足10周年を祝うとともに、地方における今後のインフラメンテナンスの在り方について考えた。  冒頭、主催者を代表して木下センター長は、四国MEの会が10年という大きな節目を迎えたことを歓迎し、地域の現場で地道に活動を続けてきた四国MEメンバーの努力を称賛した上で、近年の地方インフラの老朽化問題、特に埼玉県八潮市の下水道管路破損に起因する道路陥没事故を契機とした第3次提言(下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会)について触れ、「信頼されるインフラのためのマネジメントの戦略的転換が強く求められているが、まさに今、地方のインフラの維持管理に携わる技術者の皆さんの真意が問われている。これからの10年に向け、四国MEの社会的な役割、あるいは未来に向けたインフラの維持管理について、活発な議論をお願いしたい」などとあいさつした。  また、12年前スタートした四国ME養成講座について、同日26人の新たな認定があり、累計で283人の四国MEを輩出したことも報告した。  シンポジウムは3部構成で実施。第1部では、四国MEの会の片山会長(第一コンサルタンツ)が「四国MEの会の生い立ちと未来」、愛媛大学防災情報研究センターの山本浩司特定教授が「四国MEの会に求めること」とそれぞれ題して講演。片山会長は、愛媛MEの会が2024年度に四国MEの会へと名称変更され、現在250人を超える大規模組織に成長したことを報告。会の主な活動として、技術力向上への取り組み、他地域との連携、防災教育(DIG演習)などを紹介した他、「やらされる活動からやりたい活動へ」「資格取得をゴールではなくスタートに」することを目標とした委員会制度導入による、組織の活性化に取り組んでいることにも触れた。また、第3次提言の二つの柱「見える化の徹底」「メリハリのある管理」などの方針と四国MEの会の役割が合致することを説明し、四国全域への展開と技術の高度化を目指すビジョンを示した。  山本教授は、12年間の四国ME養成講座の歴史を振り返り、36人の講師陣に支えられて283人の四国MEを輩出してきたことを報告。時間、命、プロフェッショナルという三つの観点から四国MEの会への期待を語り、最終的に四国インフラストラクチャーメンテナンスサポートネットワーク(SIMNET)のような、法人化された支援組織への発展を提案。技術者主導でインフラメンテナンスを支援する体制の構築を求めた上で「四国MEの会には、一人一人の技術力を高め、連携する技術者集団として四国のインフラメンテナンスを支援することを目的とする組織化と活動への発展を期待したい」と述べた。  第2部では、アスパル・ワークスの浅野和香奈代表(日本大学工学部客員研究員)が「インフラメンテナンスの明日への架け橋」と題して講演。浅野代表は、まず日本のインフラ老朽化の現状について触れ、「建設後50年が経過する橋梁の割合が2024年度では39%だが、10年後には63%に急増する。全国73万橋のうち65%を政令指定都市を除く市町村が管理している。22・5万橋の建設時期が不明で、その84%を市町村が管理している」ことなどを紹介。また、「村レベルでは56%が土木技術者0人という深刻な状況になっている」とし、これらの課題に対する解決策として福島県平田村モデルで有名な「『橋のセルフメンテナンスモデル』を構築した」と説明した。  同モデルは、地域の橋をその利用者である住民や管理者らが日常的に点検し、簡易なメンテナンスを行うことにより健全な状態を維持するもの。簡易橋梁点検チェックシートを用いた住民による点検、清掃活動(橋の歯磨きプロジェクト)、小学生による橋の名付け親プロジェクトなどが実施されているという。  浅野代表は、技術的な発展として、紙のチェックシートからスマートフォンアプリ「橋ログ」への移行、360度カメラを活用したインフラウォークシステム、データプラットフォーム「橋マップ+(プラス)」の開発などを紹介。また、子どもたちへの土木教育プログラムとして、橋のペーパークラフト、コンクリート教材、年齢別(6~18歳)の学習プログラムなどの展開にも触れた。  平田村モデルは、国内外に広がり、フィリピンの国土交通省での導入も進んでいるという。浅野代表はインフラメンテナンスを通じた地域コミュニティー強化、担い手確保、高齢者の活躍の場創出など、多面的な効果を強調し、24年にアスパル・ワークスを設立したとし、「日本には住民が自ら手を動かして社会基盤を作った普請・結(ゆい)の歴史があったが、行政任せになってしまった。現在は時代の転換点に立っており、地域のインフラを自分事として捉え、行政と住民が一緒に解決していく懐かしい未来を築きたい」と述べた。  第3部では、愛媛大学大学院理工学研究科の森脇亮教授をコーディネーターに、愛媛県道路都市局の篠原伸明局長をはじめ、西条市建設部の松田敏部長、浅野和香奈氏(アスパル・ワークス代表)や四国MEの会から森實良子氏(6期生、四電技術コンサルタント課長補佐)、渡邉政富氏(9期生、渡邊建設代表取締役)、藤本憲洋氏(2期生、富士建設コンサルタント課長補佐)をパネリストに、「インフラメンテナンスの時代は未来へ~四国MEが担う役割~」をテーマとしたパネルディスカッションを行った。  パネルディスカッションでは、「今後の地方におけるインフラメンテナンス」「地方におけるインフラマネジメントの体制」をトピックに議論。前半では、行政側のインフラメンテナンス体制について紹介。篠原氏が愛媛県が管理する道路橋2600橋、トンネル175本などの膨大なインフラについて、今後20年で6割から8割が老朽化することを説明し、群マネ(グループマネジメント)の取り組みとして、市町村からの委託による230橋の点検業務や建設会社のJV・組合による維持管理を紹介した。松田部長は西条市が管理する894橋のうち76%(680橋)を職員直営で点検していることを報告し、四国ME養成講座で学んだ技術者が活躍していることを説明した。また、高速道路に架かる旧耐震基準の跨道橋除却に向けて、西日本高速道路会社との協議を開始したことにも触れた。  後半では、第3次提言で示された「見える化」「メリハリ」「住民の自分事化」について、四国ME資格者の視点から議論。藤本氏はGISを活用した技術的見える化の重要性を説明し、渡邉氏は施工業者の立場から現場でのメリハリの難しさと施工管理基準の課題を指摘した。森實氏は市民への説明におけるコミュニケーションの重要性を強調し、技術者と伝える力の両方が必要であると述べた。  最後に、各パネリストから四国MEへの期待が述べられ、篠原局長は産官学連携による技術共有の価値を、松田部長は継続的な自己研さんの重要性を、浅野氏はインフラのケアマネージャーとしての役割を「それぞれ期待する」とした。また、当日認定を受けた12期生の瀬戸丸仁氏(四国建設コンサルタント)が代表し、「地元の橋を点検修繕して長く使えるようにすることを目標にしたい」とする決意表明を行った。