八潮市道路陥没から1年 揺らぐインフラの「安心」 人材、予算確保の制度対応を

中央
 2025年1月28日、埼玉県八潮市内を通る幹線道路が交差点付近で突如、陥没し、走行中だったトラックが落下した。運転手が命を落とし、日本中に大きな衝撃を与えたこの事故は、道路直下にあった下水道管の損傷が原因とされている。地下インフラの老朽化に潜む巨大なリスクにどう備え、インフラに対する国民の信頼をどう取り戻すのか。  八潮市の事故で発生した道路陥没は、最終的に幅約40㍍、深さ最大約15㍍に及んだ。埼玉県が設置した原因究明委員会は25年9月、「硫化水素によって腐食した下水道管に起因する」との報告をまとめた。 ■リスクある下水道管は全国に  事故を受け、国交省は大口径で古い構造の下水道管路の全国特別重点調査の実施を決めた。優先的に調査した全国約813㌔のうち、「速やかに対策が必要」とされた区間は昨年9月時点で約75㌔に及んだ。下水道管の損傷は一部にとどまらず、全国的に進んでいることが明らかになった。  同様の事故を繰り返さないため、国交省は技術基準の見直しを検討。事故時の社会的影響を踏まえ、下水道を重要管路と枝線に区分し、重要管路の要注意箇所では3~5年に1回以上という「メリハリ」ある点検を打ち出した。  万が一、重要管路が損傷した場合に備え、管路の複線化や連絡管の整備といった多重化にも取り組む。点検が円滑に進むよう、インフラの整備段階から維持管理のしやすさ(メンテナビリティ)に配慮するとした。 ■地下空間の把握という新たな課題  地下にあるインフラは下水道だけでなく、上水道やガス、電気など多岐にわたる。八潮市の事故は、これら地下インフラの適正なメンテナンスという難題を道路管理者に改めて突きつけた。  このため、国交省は4月から道路の地下を占用する物件の維持管理基準を強化する。占用期間の更新時に管理状況の報告義務を課すこととした。  さらなる制度的な対応も見据える。占用手続き中に維持管理の内容を道路管理者が把握したり、占用物に関する工事完了後に竣工データを道路管理者に提出する規定の整備も検討。目指すのは、デジタル技術を活用して地下空間の位置情報を把握できる体制だ。 ■自治体の体制、どう補う  事故を受け、国交省が設置した有識者委員会は、25年末までに3次にわたる提言をまとめた。柱の一つは、生活に密着したインフラを管理しているにも関わらず、技術職員不足に悩む多数の市町村への支援体制の構築だ。地域をまたいで複数のインフラを管理する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の活用や、専門家派遣を通じた自治体支援の強化を明記。予算の安定的な確保や、予防的な対策への重点的な財政支援も求めた。  提言書を受け、金子恭之国交相は「法令を含めた諸制度の見直し」に言及。社会資本整備審議会にインフラマネジメント戦略小委員会を新設し、1月30日からインフラ全般の制度的対応を見据えた議論も開始する。  有識者委の委員長を務めた家田仁政策研究大学院大学教授は、八潮市の事故の社会的インパクトを「(12年の)笹子トンネル事故に匹敵する」とした。国民の生活・経済活動を支えるインフラへの信頼を取り戻すため、新たな段階のメンテナンスサイクル確立が求められている。