複数年度の「予算枠」 設定 公共投資に長期の見通しを

中央
 自民党は1月27日に公示された衆院選の公約で、補正予算を前提としない予算編成と複数年での財政出動を可能にする「新たな予算枠」の設定を打ち出した。高市首相は解散前の会見で機動的な財政出動をコミット(約束)する仕組みを作るとし、対象に国土強靱化などの「危機管理投資」を挙げた。狙いは、将来にわたる財政支出を予見しやすくし、民間事業者の設備投資を後押しすることだ。経済成長と国民の安心安全を支える公共投資にこそ、この「予算枠」は適している。衆院選やその後の国会で、実現に向けた活発な議論を期待したい。  国の予算を毎会計年度に作成・議決することを求める「予算の単年度主義」は、憲法に基づく重要な原則だ。ただ、実際の運用では繰り越しや国庫債務負担行為といった例外を設け、複数年工事などを円滑に実施できるようにしている。  国土強靱化実施中期計画に基づく事業も、裏付けとなる予算そのものは毎年度編成するが、「5年間で20兆円強」という事業規模を示し、公共投資に一定の予見性を持たせている。  埼玉県八潮市の道路陥没事故を契機とし、一層の強化が望まれるインフラメンテナンスは、まさに長期・安定的な公共投資が必要な分野だ。切迫する南海トラフ地震や首都直下地震、激甚化・頻発化する風水害への対策と合わせ、必要な事業量の確保と複数年度にわたる予算への政府の揺るぎない関与が求められる。  政府の公共事業費は2000年代を通じて急激に減少し、市場の収縮がダンピングの悪しき商慣習や建設業界からの大量の離職者を助長した。その爪痕は今も残る。  公共投資に複数年度の十分な予算枠が設定されれば、こうした時代の再来に対する建設業界の不安を払しょくできる。市場の安定を見込めれば、企業の人への投資が加速し、担い手不足解消につながる。生産性向上・省人化に向けたICT投資の追い風にもなる。  複数年度の予算枠を設ける以上、財源確保策の検討は避けがたい。特に人口減少の深刻な地方で、生活と経済を支えるインフラ維持のコストをどう負担すべきかは、国民的な議論を要する難題と言える。建設業界は、インフラや自らの役割を発信し、前向きな議論となるよう後押しする必要がある。