警備屋ケンちゃん 省人化と安全性の向上へ AI交通誘導システムを導入
静岡
AIシステムを導入し円滑な交通誘導が図られた
片側交互通行の道路工事の現場では、施工区間の両端に警備員が立ち、車両を直接誘導するケースが一般的だ。そのため、車両との接触など誘導警備員の受傷事故のリスクを「ゼロ」にするのは限りなく難しい。多くの警備会社が「車両との距離が近く、『ヒヤリハット』が起きやすい」「事故が起きると工事が止まり、工程にも影響を及ぼす」「安全対策を強化したいが、人手が増やせない」などの課題を抱える。これらの課題を解決しようと、警備屋ケンちゃん合同会社(三島市)は、両端誘導をシステム化し受傷事故リスクの低減を目指す「AI交通制御システム」を現場で導入している。
2021年7月3日に熱海市の伊豆山地区で発生した土石流災害では、多くの尊い生命が犠牲となった。その災害現場にほど近い「市道伊豆山神社線取付道路整備工事」(施工・小秀土建)で、KB―eye(東京都千代田区)が開発したAI交通誘導システムを導入・運用している。
現場は交通量の多い片側1車線の道路だが、工区の両端に設置したAIカメラで車両を検知し、LED表示板による自動誘導で通行を制御している。警備員は、現場の安全地帯から稼働状況を監視・管理する役割を担うことで、危険箇所への配置を減らし労働環境の改善が図られている。万が一、トラブルが発生した際にも、映像データを基に状況確認や再発防止の検討に生かすことができ、工事再開に向けた対応も迅速に実施できるという。
警備屋ケンちゃんで指導・教育の責任者を務める原正知氏は「警備業界でも人手不足が深刻化する中で、省人化と安全性の向上を両立できた」と導入のメリットを強調する。オペレーションミスや誘導のばらつき(品質)の抑制、運用ルールの標準化による教育負担の軽減などの効果がもたらされ、「人の勘に頼らず、『仕組みで安全を守る』ことの重要性を再認識した」という。当該現場のような24時間規制の交通誘導では、特に夜間帯の人員確保が困難を極めるが、「必要人員の最適化が図られ、配置が安定した」効果も得られた。
県内における公共工事での導入事例は少ないが、今回の現場では、熱海市が設計段階で費用を組み込むなど、発注者の理解も追い風となった。ただ、中部地方整備局飯田国道事務所が舗装修繕の現場でシステムを導入した検証結果では「円滑な交通に十分に役立った」と評価する一方で、現場監視員が規制両端を見通せない道路での運用や交差道路の幅が狭く機器を設置することが不可能なケースなど改善点も挙げている。
それでも、急きょ人員が必要となる災害復旧現場での誘導員の2次災害発生を抑止する他、真夏の猛暑における誘導員の健康リスクの低減にも一定の効果が見込まれる。「交通誘導における新たなスタンダード」となるためには発注者の共感・理解も欠かせないことから、運用事例のさらなる検証が求められる。
