岡山市 ~「わくわく感」と「賑わい」あるまちづくりへ~

岡山

大森雅夫岡山市長

 昨年10月の岡山市長選挙で4期目の当選を果たした大森雅夫市長。これまで3期一貫して「力強さ」「住みやすさ」「安全・安心」の3本柱を掲げ、さらに歴史・文化・スポーツを生かしたまちづくりなどを進めてきた実績が広く市民に支持された。4期目は市民がより「わくわく感」を感じられる「賑わい」を創出したい考え。  プロスポーツや大規模コンサートなどに対応可能なアリーナ建設をはじめ、中心市街地での再開発事業も数カ所で着実に実現し、まちの景色が徐々に変化している。岡山駅前広場路面電車乗り入れや路面電車環状化とともに公共交通網の充実も着々と進み、訪れた人々の利便性や市民の住みやすさが増す。  幹線道路網整備や橋梁などの長寿命化、浸水対策をはじめ大規模地震に備えた上下水道耐震化といった都市基盤整備も計画的に推進し、安全・安心なまちづくりが高度化し都市の防災減災力が高まる。  次々と都市課題に取り組み、より良い方向性の都市再編が進む政令指定都市の岡山市。「わくわく感」と「賑わい」を創出するまちづくりの具体的な各施策の現状について、大森雅夫岡山市長に聞いた。  ―4期目の施政方針と賑わい創出についてお聞かせください。  市長就任以来12年間、岡山城のリニューアル、岡山芸術創造劇場ハレノワの開館、ハレまち通りの1車線化や下石井公園芝生化などの中心市街地の活性化や企業誘致など、岡山市のポテンシャルを生かすべくさまざまな取り組みを行ってきた。また民間の再開発等の動きもあいまって、市内総生産・民間投資の伸び率も順調に推移するなど、岡山市は大きく発展しており、中四国を代表する都市にふさわしくなってきたと感じている。  市民の「暮らしやすさ」は向上したが、「わくわく感」が足りないとの指摘もある。これまでも、固有の歴史や文化を活かした地域の魅力づくりや国際交流、芸術・スポーツを通した交流など、さまざまな施策を行ってきたが、今後、アリーナをはじめ、市民の皆さまの「わくわく感」をさらに高める取り組みを進め、賑わいを創出していきたい。  ―スポーツ振興策として取り組むアリーナ整備事業の役割や効果と、県民市民が求めているJ1新スタジアムに関する考え方についてお聞かせください。  アリーナについては、プロ・アマのスポーツ団体から、交通利便性と大規模大会のキャパシティを両立できる会場確保に苦慮している現状や、リーグが求める施設基準変更で国内最高峰リーグでの活動ができなくなる事態も想定されている地元トップチームの窮状を伺い、検討を進めてきた。  また、岡山市は、近畿と九州を結ぶ東西軸と、山陰と四国を結ぶ南北軸のクロスポイントに位置し交通至便性は極めて高く、再開発などの民間投資意欲の高いまちで70万市民を有する。圏域では100万を超える人口となるこのエリアにとって、アリーナは、これからのまちの未来やまちづくりの観点で、なくてはならないものであり、あってしかるべきものと考えている。また、このアリーナは、スポーツイベントや、ライブコンサートなどの開催を通じて、市内外に大きな経済効果をもたらすだけでなく、金額には表すことのできない、「心の豊かさ」や「わくわく感」を生み出すものとなる。  これらのことからこの度事業化を決断し、そのための予算を昨年の11月定例市議会において議決をいただいた。岡山の素晴らしい未来を創り出すために必要な事業であるとの認識の下、しっかり進めていきたい。  スタジアムについては、ファジアーノ岡山の試合を観たくても観られない人が大勢いる状況であり、アウェイ側のサポーターにとっては特に顕著である。県外から観戦に来ていただければ、岡山市にも大きな経済効果があり、市の魅力を発信できる貴重な場にもなる。 そういった意味から、少しでも多くの方が観戦できるよう、新スタジアムだけでなく、既存スタジアムの増席等、応援環境の整備は積極的に進めるべきと考えている。  なお、スタジアムの増席について、市条例の貯水槽の規制は大きな支障はなく、前向きな協議が可能である。  プロスポーツチームは市民県民の宝であり、市と県が一緒になって応援することが必要だと考えている。具体的な検討を進めるにあたり県が主体となり設置している協議体については、お声掛けがあれば、岡山市も積極的に協議に参加したい。  ―新庁舎完成に期待する役割については。  今年5月末に完成予定の新庁舎工事は、おおむね順調に進んでいる。工事用足場も徐々に外れて、建物外観もあらわになってきており、岡山城をモチーフとした岡山らしさ溢れる新たなランドマークとなることを期待している。完成後には、広く市民の方を対象とした「市民見学会」を実施する予定であり、15階の展望テラスからの眺望を楽しんでいただきたい。  8月下旬から旧庁舎からの移転を開始、11月下旬に全面開庁する予定。新しい窓口は、「書かない」・「待たない」に加え、市民課証明と税証明の窓口を一本化した「回らない」窓口を目指しており、利用される方の利便性が向上する。  今後も「新庁舎になって良くなった」と、多くの市民の方に実感していただけるようにしていきたい。  ―各種再開発事業を含めたまちづくりの方向性について伺います。各再開発事業によって得られる効果や、住民増加による商店街(再生)の賑わいを創出する活動などについては。  これまでハレまち通りの1車線化による歩道拡幅や岡山城のリニューアル、岡山芸術創造劇場ハレノワのオープン、下石井公園の天然芝生化など着実に事業を実施してきた。  駅前商店街では、駅前町1丁目2・3・4番地区再開発事業が動く中、立地の良さから飲食店の誘致が進んでおり、空き店舗はほとんどないと聞いている。  表町商店街ではハレノワ開館効果が相当出てきており、岡山市が行っている店舗化に向けた支援や、表町商店街のさまざまな行動もあり、開館から2年間で48件の新規出店になっているなど、これまで丁寧に進めてきた取り組みが一つずつ結実している。  最新路線価においても、岡山市の都心については全ての主要地点で上昇し、特に2019年から変動がなかった表町商店街の路線価も上昇している。 暮らしやすさ、都市の力強さ、安全・安心は大きく向上し、この好循環をさらに加速させるため、引き続き市の事業を進めていくとともに商店街の主体的な取り組みを後押しすることで、さらなる活性化に努めていく。  ―路面電車の乗り入れ・環状化、公共交通、道路網整備について伺います。まずは路面電車の岡山駅乗り入れおよび回遊化の進捗と将来像、その効果についてお聞かせください。  岡山駅前広場への路面電車乗り入れ整備事業は、27年3月の乗り入れ完成を目指して工事を進めている。現在、駅前広場や駅前交差点、地下街で工事をしており、工事はおおむね順調に進んでいる。  駅前広場では、公共交通の情報や快適な待合環境を提供する「公共交通案内所」、雨に濡れない乗り継ぎ環境のための「長庇」の整備も進めており、26年度には順次完成していく予定。その後、バスゾーンの上屋と修景ゾーンの整備を含めた広場全体のリニューアルは、29年度上半期の完成を目指して整備していきたい。  この事業は、本市の公共交通ネットワークの要である岡山駅の利便性の向上や中心市街地の回遊性の向上を図るため、路面電車を駅前広場に乗り入れるとともに、駅前広場の機能や魅力向上を図り、岡山の玄関口にふさわしいものとするためのリニューアル。路面電車を乗り入れることで、電停が分かりやすくなり、乗り換え時間の短縮や安全性の向上、バリアフリー化も図られる。また駅前広場についても後楽園に見立てたデザインを採用し、岡山を訪れた人が駅前に降り立った瞬間に岡山を感じられ、期待感や楽しみが膨らむ「シンボリックな空間」が創出される。  この事業により、回遊性を高め、賑わいを中心市街地全体に広げるとともに、政令市岡山の玄関口にふさわしい空間として、また、岡山を訪れる方をおもてなしする空間として、魅力的なものとなるようしっかりと整備を進める。  路面電車の延伸環状化については、21年に都市計画決定したのち運行事業者との協議が中断していた「ハレノワ線(仮称)」の整備について、今年1月に運行事業者と合意し、事業計画案がまとまった。  岡山市では、定時制に優れ輸送力の高い路面電車のネットワーク拡充を図るため、20年2月に「岡山市路面電車ネットワーク計画」を策定。「ハレノワ線(仮称)」は岡山駅を発着する異なる2路線を結び路面電車の環状化を実現するもの。「岡山駅前エリア」と岡山芸術創造劇場「ハレノワ」の開館を契機に賑わいが増す「表町・千日前エリア」の回遊性向上を図る上でも、同区間は最も優先順位が高く、早期実現に向けて取り組む事業と位置付けている。  26年度から設計に着手する予定としており、29年度中の運区開始を目指している。岡山駅前広場への乗り入れと合わせて路面電車の利便性を向上させることで駅前エリアに集中している賑わいを都心全体に広げていくため、事業者と協力して着実に進めていきたい。  ―公共交通網としてのバス路線効率化や拡充、都市交通DXについてお聞かせください。  現在、市民の日常生活に必要な移動手段を守るため、バス事業者と協力して「岡山モデル」のバス路線の再編に取り組んでいる。路線バスを需要に応じて幹線と支線に分割し、郊外と地域拠点を結ぶ支線バスに使用する小型車両の調達や運行経費の一部を市が負担する公設民営方式を導入、25年度から27年度までに10方面17路線で支線の運行を開始する予定で、現在は5路線で運行を開始している。  持続可能な公共交通ネットワーク構築の切り札となるよう利用促進に取り組み、市民・利用者の声を聞きながら、より使いやすいものに改善していきたい。特にわかりやすい運行情報の提供は重要と考えており、バスロケーションシステムの拡充やデジタルサイネージの設置を進めている。  また、タクシー配車アプリ導入支援により、利用者の利便性向上と業務のデジタル化を促進し、経営効率を向上させることで持続可能な地域公共交通の維持・確保を図りたい。  ―岡山環状道路を初めとした外周部交通網の整備進捗状況と、今後の整備計画および想定される事業効果についてお聞かせください。  市中心部の深刻化する慢性的な渋滞による時間的損失や都市機能の低下、居住環境の悪化などを改善する取り組みのひとつとして、岡山環状道路をはじめとする三環状道路の整備、高速道路と市内の道路ネットワーク強化に取り組んでいる。  三環状道路のうち、外環状線の一部を構成する(主)岡山赤穂線(岡山市中区中井~東区宍甘)については、JRアンダーパスの工事を進めるとともに岡山市中区中井の用地買収などを進めている。  中環状線の一部である(都)下中野平井線(岡山市北区十日市中町~中区平井)については、25年度旭川に架かる橋梁の上部工に着手し、早期の完成を目指し工事を進めている。  高速道路と市内の道路ネットワークの強化として、吉備スマートインターチェンジ24時間化・大型車対応を進め、26年2月1日(日)に一般国道180号総社・一宮バイパス(北区一宮山崎~北区今岡)と同時開通した。この整備により、高速道路のアクセス性や利便性が向上し、岡山インターチェンジへのアクセス道路となる国道53号をはじめとする周辺道路の渋滞緩和が期待される。  さらに、26年度開通予定である岡山環状南道路が整備されると、岡山港周辺の産業・物流拠点から山陽自動車道までが外環状線でつながり、これまで中心部を走行して約53分必要だった所要時間が約35分に短縮され、物流活動の円滑化が図られる。  また、国道2号においては、中国地方の自動車交通量の上位10カ所中1位と2位の箇所があり、岡山市内の妹尾西、妹尾東、古新田交差点を含めた5カ所の交差点立体化が国において22年度に事業化されたところで著しい交通渋滞の緩和が期待される。  ―安全・安心の基盤整備と防災減災の観点から伺います。まずは旭川・百間川の流域治水への地域の取り組みと、国主導の旭川ダム再生事業への期待をお聞かせください。  「平成30年7月豪雨」で床上浸水した約2230戸の浸水解消に向け、ハード整備に加え、市民・事業者と連携したソフト対策による総合的な浸水対策を実施している。ソフト対策の一つとして農業用水路の事前水位調整を実施しており、その効果は、幹線水路を50㌢低下させることで約50万㌧の貯留容量が生まれる。24年度末までに約7割の床上浸水が解消し、残りの解消には国による旭川ダム再生事業が不可欠と考えている。  現在、旭川中下流で計画されているダム再生や河川改修が完成すれば、「平成30年7月豪雨」よりも大きい規模で想定されている40年に1度の降雨が発生しても、市街地の床上・床下浸水はおおむね(約99%)解消される見込み。  旭川ダム再生事業は26年度に建設段階へ移行されることとなり一歩前進したが、総事業費が約1100億円と膨大で、引き続き事業推進に向けて予算確保を国へ要望していく。  ―南海トラフ地震を初めとする大規模地震への対策として、避難場所の環境改善、防災DXの取り組みについては。  避難所の環境改善への取り組みや備蓄物資や資機材の充実、民間事業者との物資供給やサービス提供などに関する協定の締結など大規模地震対策を推進しており、避難場所となる市立中学校の体育館への空調整備を進めていく。  防災DXへの取り組みとしては、迅速な災害情報の収集や市民への緊急情報の確実な発信のための、各種SNSの活用や災害に強い情報通信システムを構築する予定でいる。  ―上下水道管路施設の老朽化対策について、課題と今後の計画的な整備推進方針については。  上水道事業は、水道管路が24年度末時点で約4400㌔あり、そのうち法定耐用年数の40年を超過した管路は約1300㌔(約31%)を占めており、今後も年々増加する。水道管路は、管の材質や埋設されている土壌環境、事故歴などを基に更新の優先順位を設定し、効率的に老朽管を解消している。また、漏水の早期発見を目的に、ドローンによる水管橋点検の高度化を図るとともに、水道管路約500㌔と約10万戸のご家庭の漏水調査については今後も継続的に実施していく。  下水道事業は、岡山市が管理する下水道管路が24年度末時点で2800㌔を超え、そのうち標準耐用年数の50年を超える管路は約167㌔(約6%)を占めており、今後も年々増加する。  埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、市独自に地上から道路下の空洞探査を9・3㌔実施し、その後、国からの要請を受け、現在管路内からの調査を38㌔実施しているが、現時点で直ちに陥没事故につながるものはなかった。まずは点検・調査を実施し、対策が必要な箇所が確認された場合は、計画的に修繕や改築・更新を実施していく。  ―地域の守り手でもある建設業は、担い手不足や技術の伝承、建設業の魅力発信、官民工事の受注ダンピング問題などが課題となっている。建設業の健全な発展の基盤となる担い手三法(建設業法、入契法、品確法)の観点から、岡山市の取り組みをお聞かせください。  ダンピング受注については、工事の手抜き、下請け業者へのしわ寄せ、労働条件の悪化など建設業の健全な発達を阻害するものと理解している。国からもダンピング対策の強化・徹底を図るよう通達があり、低入札価格調査制度または最低制限価格制度の適切な活用を徹底することによりダンピング受注の排除に努めている。 具体的には許容価格1億円未満の工事(一般競争入札)は 最低制限価格制度を 、許容価格1億円以上の工事(総合評価一般競争入札)は低入札価格調査制度を適用している。また、調査基準価格の算定方法は、国の中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)モデルに従い設定している。  25年6月「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)」の一部改正により、入札価格内訳書に記載する入札金額の内訳として、今後、材料費、労務費などの記載が必要となる。  人手不足問題については、建設業は地域の経済基盤として大切な役割を担っているので、岡山市としても今後の動向が懸念される状況があると認識している。各企業の人材確保の取り組みを期待している。  技術力の向上については、岡山市でもICT対象工事の対象としている工事の実施に伴い、業者へのインセンティブとして工事成績評定の加点、本年度より舗装工事も対象とするなど、今後も順次対象工事を拡大していく。また、ICT活用工事未経験の業者への広報・啓発として、ICT工事への相談や指導、研修など実践的な支援や技術面のサポートを依頼することかできる「サポートセンター(国が主体となり設置した団体)」を掲載するなどし、岡山市HPへ掲載、加えて各発注担当者より受注した業者への啓発などより一層の活用促進していく。  建設業の働き方改革については、岡山市も週休2日工事の拡大促進への取り組みとして、業者へのインセンティブとして工事成績表評定への加点や工事発注担当者より業者への積極的な啓発活動により、現時点で9割以上達成しており今後も継続していく。  地域の守り手でもある建設業には、災害協定を通じて、災害が発生した際には建設業の皆さまのお力により、地域の早期復旧を支えていただくことを期待している。