〈連載〉衛星と国土強靱化 漏水調査編 上

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宇宙水道局は漏水リスクを5段階で評価する(提供/天地人)

 日本全土には国民生活を支える膨大な水道インフラ網が整備されている。しかし、官民ともに技術職の担い手が減少し、適切な調査・維持管理をどのように行っていくかが大きな課題となっている。もちろん、全国の水道事業者は手をこまねいているわけではない。従来の音聴調査を効率化するため、衛星で観測したデータを用いて、水道管の漏水リスクを評価したり、漏水可能性エリアを抽出したりする事例が増えてきた。調査期間の短縮や費用の削減といった効果も表れつつある。  天地人はJAXAから初めて出資を受けたスタートアップだ。衛星で観測した膨大なデータをAIで解析することで、社会課題を解決するさまざまな事業を手掛けている。  その一つが2023年4月にサービス提供を開始した「宇宙水道局」だ。既設の水道管が抱える漏水リスク(健全度)を評価するとともに、管路更新計画の策定を支援する。地表面温度を観測できる熱赤外衛星の観測結果に、地質や土壌、人口密度などのビックデータ、さらに管路の材質、敷設年度、漏水・修繕履歴など百数十種類の情報を組み合わせ、AIで横断的に分析(マルチモータル)して、100㍍のメッシュごとに漏水リスクをA~Eの5段階で評価する。  福島市での導入を初めとして現時点の累計契約自治体は50者を、分析した管路延長は10万㌔を超える。10~20万人規模の自治体で導入した際の効果を見ると、10㌔当たりの漏水発見数は、従来の音聴調査では過去11年間の平均が「0・7カ所」だったのに対し、23~24年に宇宙水道局で高リスクと判断された箇所を重点的に音聴調査したところ、約6倍増の「4・3カ所」になったという。  漏水1カ所当たりの調査費用は、宇宙水道局の導入費の上乗せ分を加味しても、従前の86万円から18万円と約8割の減となった。  サービスはアップデートを重ねている。例えば、自治体で異なっていた管路形式やその表記方法を独自に標準化した。  自治体それぞれで管の材質の表記や継ぎ手の形式の略し方などが違うことが、導入の実績が増える中で分かってきた。同じ管でも名称が異なるとAIが認識できず、分析が難しくなってしまう。そこで自治体や業界団体へのヒアリングを重ねて、独自に表記を整理。解析の解像度を向上させたという。  樋口宣人執行役員COO(最高執行責任者)は天地人のミッションを「衛星が取得したデータを利活用して社会課題の解決に寄与すること」と説明。宇宙水道局のサービスも「衛星で地中の水道管の漏水を可視化できないかという相談が自治体から寄せられたところから検討がスタートした」と振り返る。  衛星を活用すると「同じ基準で広範囲の観測データを継続的に取得できる」。災害の発生時に被害状況を確認するのにも有効だが、その前提として平常時のデータの蓄積がなければ、被災状況を可視化できない。  樋口氏は「さまざまなプレイヤーが衛星データの使い道を考え、実践するのが当たり前になるような〝衛星の日常化〟を進めるのが大切」と説く。「小学生でも衛星データに触れるようなってほしい。生成AIも使用すれば、ノーコードでデータを活用できる世界ももうすぐ来るのではないか」