東北アライアンス建設(上) 東北から建設業を変える

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 東北6県の元請けを中心とした建設企業7社が共同出資した東北アライアンス建設(TAC、福島県郡山市)の発足は、個社で対応困難な課題に地域建設業が結集して挑む、新たな試みだ。今年2月には、コマツなど異業種企業6社とのパートナーシップ協定の締結と、協力会社数百社による事業協同組合の設立も表明。元請け・協力会社間や業種間の枠を超え、人手不足や資機材価格の高騰といった業界共通の課題を解決する。  TACの特色の一つは、完工高数十億円~100億円超と東北6県でそれぞれ活躍する有力な地域建設業で構成している点だ。TAC設立を主導し、代表取締役社長に就いた隂山正弘氏(隂山建設代表取締役社長)は、「最初に声をかけた全社が共感し、一緒に業界の課題を解決しようと言ってくれた」と振り返る。担い手確保の切迫感を共有したことに加え、「地域を支える企業のパーパス(存在意義)の側面からも、TAC設立に合意できたことが大きかった」という。  TACの主な目的の一つは、災害対応力の強化だ。25年12月に青森県で発生した地震では、翌日には構成する各社が支援できる体制を整えた。ひとたび災害が起きたとき、個社の枠を超えて人・資機材を動員できる仕組みは大きな強みとなる。  平常時にも建設会社として営業活動を展開する。現場への距離や工事規模を理由に、これまで個社としては手を出せなかった案件も、TACであれば受注できる可能性がある。各社が広域に連携できるようになると、建築物であれば新築だけでなく、完成後のメンテナンスに対応しやすくなる効果もある。「われわれの活動のフィールド・商圏を広げていく」と、隂山氏は意気込む。  TACが東北6県を舞台に広域で活動する一方で、出資する各社はこれまで通りに各地域で営業を続ける。構成する各社の独立性を維持したままTACとして連携し、新たな事業展開の機会を獲得するイメージだ。  まずは民間工事をメインのターゲットに想定している。ただし、公共工事を受注する可能性を排除しているわけではなく、地域や行政からの理解を得られれば挑戦することも視野に入れる。  TACの設立による、直接的な営業面以外の効果が既に現れつつある。4月には、構成する各社の新入社員や若手社員を集め、一体的な社員教育を予定。これまで個社で行っていた研修も、連携して行うことでレベルを高めることができる。「各社の強みを組み合わせて、全体が底上げされる」というのが目指す姿だ。  TACの立ち上げを受け、大手ゼネコンの退職者がセカンドキャリアとしてTACへの就職を選ぶなど、構成する各社の採用にもプラスの効果が及んでいるという。  TACとして営業活動を本格化する中で、構成企業に所属する監理技術者の取り扱いなど制度的な課題に直面する可能性もある。隂山氏はコンプライアンス確保を前提とした上で、制度を所管する国交省と積極的に意見交換する意欲を示し、「われわれの活動を通じて(制度に)一石を投じることとなれば、非常に有意義なことではないか」と話した。