県建協・県測協 国土強靱化推進2団体の会長にその思いを聞く
岡山
岡山県建設業協会 荒木会長
国土強靱化計画は、大規模な自然災害から国民の命と財産を守り、社会を維持するための国家的な取り組みだ。東日本大震災を教訓に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が制定され、1月には国土強靱化年次計画2026の策定方針が決定した。予算執行額と進捗を整理し、中期計画の初年度から施策を着実に前進させる。計画遂行のため、岡山県の建設業界はどのように考え、どのように行動していくのか。地域の「安心・安全」を守るために必要な取り組みについて岡山県建設業協会の荒木雷太会長と岡山県測量設計業協会の清水英二会長に「その思い」を聞いた。
~岡山県建設業協会 荒木会長~
【地域建設業の安定経営で強靭化】
―国土強靱化に向けた地域建設業の役割、貢献について
近年、気候変動により自然災害が激甚化・頻発化しており、明日にも起こるかもしれない南海トラフ巨大地震など、こうした災害に備える必要がある。さらに、インフラの老朽化も進んでおり、下水道管破損による陥没事故や、水門の老朽化による塩害、橋梁の損傷といった重大な事象も発生している。
こうした中で、社会資本の整備や維持管理を支え、災害発生時には、「地域の守り手」として、どこよりも早く現場に駆け付け応急復旧にあたる地域建設業は重要な役割を果たしている。
【群マネ推進で広域的な地域づくり】
―国土強靱化を促進するために必要な施策について
資機材価格や人件費の高騰などにより地域建設業の経営環境が厳しさを増す中で、国土強靱化を進めるには安定した公共事業費の確保が不可欠。高市政権は、防災・国土強靱化を成長戦略の柱の一つに据えるともに、補正予算を前提としない予算編成や複数年度での財政出動を行うことで財政支出を予見しやすくするとしており、こうした取り組みが地域建設業の持続可能な経営につながるように、県や市町村にも同様の視点での予算編成を行っていただきたいと考えている。
また、市町村の技術職員不足は深刻であり、複数自治体や複数分野のインフラを一体的に管理する「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」の導入を進めるため、県には積極的な支援をお願いしたい。
―行政・県民に強く訴えたいことについて
地域建設業が社会資本整備・維持管理を支え「地域の守り手」として、その役割を果たしていくためには、中長期的な見通しを持って持続的な経営ができる安定した事業量を確保し、担い手の確保・育成に取り組む必要がある。国土強靱化に向けて予防保全の重要性をご理解いただくとともに、地域建設業が持続的に活動できる環境整備に取り組んでいただきたい。安定した事業量が確保されなければ、地域の安全・安心を守ることができなくなってしまうことを危惧している。
―国土強靱化による地域の発展について
国土強靱化の取り組みは災害への備えにとどまらず、地域の発展にも資する必要不可欠な取り組み。災害に強い地域は住民の安心感を高め、人材の定住や企業の進出・投資にもつながる。また、インフラ維持管理の高度化は地域建設業の技術力を向上させ、地域産業の振興も促進する。さらに、群マネの推進により地方自治体間の連携が進めば、広域的な地域づくりにも大きく貢献できる。地域建設業は地域の「今を守る!未来を創る!」存在として、今後も国土強靭化に全力で取り組んでいくためにも、皆さまには引き続きのご理解とご協力を賜るようお願い申し上げたい。
~岡山県測量設計業協会 清水会長~
【要望を設計に組み込める人材育成】
―国土強靱化に向け推進していく方針は
地域の安心・安全を守るためには、ハード面(道路・河川改修、堰堤などインフラ基盤整備)も大事だが、防災教育や地元事情に沿った防災マップ作成なども大切。「あそこの道は危ない」など地元でしか分からないことを「表(おもて)に出す」ことも必要だ。
図面を正確に、早く作成することは必須だが、地元の声を拾い上げ、その要望を設計書に盛り込むことができる人材を育成することも大切だと思う。国土強靱化は、大中小と事業規模の違うゼネコン・コンサル企業がそれぞれ役割を果たし、力を結集することで完遂する。インフラ・防災施設整備には、相当な時間と予算が掛かる。だからこそ並行して、地域の状況を把握し、発注者側へ提案できる人材育成やルール作りを進めていかなければならない。
―DXや生成AIなど最先端技術の活用は
衛星画像を使ってインフラの老朽化を点検するといった手法は、われわれの業界も積極的に活用し始めている。例えば水道管や下水管の老朽化調査。何万㌔もある管をアナログで調査するのは不可能で、衛星の画像処理で漏水箇所を抽出する技術など、正確な情報を仕入れるシステムが実用化されつつある。ただし、そういった最先端技術活用は大手企業がメインとなるが、地元のコンサル企業でも活用できる調査・点検のDX技術というのも必ずある。そういった情報発信を協会としても務めていく。
あとはAIの有効活用。報告書の作成などにAIを上手く活用、業務の効率化に使っている企業が増えている。省力化や人為的ミス防止にも役立っており、効率的に仕事を進めるためのツールとなりつつある。また、「技術継承」としてもAIを使い始めており、膨大な過去データや報告書をまとめる手段、若手に教える際のデジタルツールとしても活用可能だ。AIを否定するのではなく、技術継承の一環として利活用していくことは非常に良いことだと思う。
【縁の下の力持ちとして一翼担う】
―調査・測量・設計業界の役割は
未然に災害を防ぐための対策提案や、現況を正確に伝えるための調査・測量が今後も重要な役割となってくる。地元が「安心・安全に暮らせる街づくり」を支える「縁の下の力持ち」として一翼を担っていきたい。
また、今は水道、下水道、ガス、電気とバラバラに管理されている。これが一元化されていれば、「下水管を補修する際には、隣の水道管も直そう」と無駄のない整備スケジュールを組むことができるはずだ。そういったインフラ整備に向けた提案・データ管理なども我々に課せられた役割だと認識している。
―国・県など発注者側に望むこと
国土強靱化の5年で約20兆円という予算内訳を、ある程度、明確にしてほしい。例えば、岡山県の予算や調査・設計・工事費にはどれ位が充てられるのか。予算・計画に基づいて、地元の企業が力を発揮できる環境をつくってほしい。それが最終的に県民の安心・安全につながっていくと考える。
