手形廃止まで1年(1)決裁手段見直し、迫る期限
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建設業の商取引に深く根付いた約束手形の交換が、2027年3月末に廃止される。これに先立ち、主要な銀行の多くは9月末を手形の最終振り出し期限に設定。全国銀行協会(全銀協)は、10月を手形廃止に向けた山場とみて、混乱が生じないよう電子的な決済サービスへの早期移行を呼び掛けている。
建設業は、製造業や卸売業と並んで手形利用の多い業種の一つだ。建設業は工事に先立って資機材・労務の調達が必要な一方で、施工後に対価を受け取る取引形態が多い。資金の猶予を確保するため、元請け・下請け間や建設業者と建材業者の間で手形を用いた取引が深く浸透してきた。
国土交通省の25年度下請取引等実態調査によると、下請けとの取引の一部または全部で手形払いを利用している割合は15・1%。全額現金払いが84・7%と大半を占めているものの、手形払いが根強く残っている現状が確認された。
ただ、足元では、決済手段の電子化を求める政府方針を受け、手形の交換枚数が急減している。手形・小切手を合わせた交換枚数は20年の4035万枚から25年に1416万枚まで減少した。
手形廃止に向け、金融機関は着実に準備を進めている。全銀協によると、昨年末時点で金融機関の95%以上と大半が手形用紙の新規発行停止や取立受付の停止を実施済みか、または予定している。言わば手形取引の「蛇口を閉める」取り組みだ。
さらに、都市銀行や地方銀行、第二地銀の7割超が手形の最終振出期限を9月末に設定。既に発行された手形の利用も、多くは10月で実質的にストップすることになる。手形・小切手の交換枚数は11月にそれ以前から半減し、12月には10分の1以下に縮小する見込みだという=グラフ参照。
手形に代わる決済手段として、全銀協は手形と同様に譲渡や不渡りに対する取引停止などの機能を備えた電子記録債権の普及を急ぐ。ただ、小規模な事業者の場合、経理事務の見直しや電子化対応がハードルとなる。元請けが手形から電子記録債権へ移行しようとしても、下請けが対応できず、見直しが進みにくいという課題もある。
建設経済研究所(RICE)のヒアリングでは、手元に十分な資金があったり金融機関の融資を受けられる企業から現金払いへの移行に前向きな声が聞かれた。一方、資金繰りに余裕のないものの、電子記録債権に対応できていない事業者が手形廃止により資金調達リスクに直面する恐れは否定できない。
多くの金融機関で手形振出の最終期限となる10月の前後には、金融機関への問い合わせが集中することが見込まれる。混乱を避けるためにも、手形を利用している建設業は資金繰りを改めて確認するとともに、決済手段の見直しに向けて早期にメインバンクに相談しておく必要がある。
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27年3月末の手形の廃止まで、1年を切りました。建設業の商慣行に深く根付いた手形の廃止は、これからの資金繰りにどのように影響するのでしょうか。この連載では、手形廃止にどのような課題があり、これからの資金繰りをどのように変えるのか、取材します(毎週水曜日配信)。
