労働時間規制の見直し 柔軟な制度設計が必要だ
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建設業に時間外労働の上限規制が適用され、2年が過ぎた。それ以前は規制の適用を除外され、実質的に青天井とされてきた建設業の時間外労働は減少傾向にある。長時間労働を前提とした働き方を見直し、他産業と同じ水準の職場環境を整えようという、業界の努力の成果だろう。
一方で、昨夏の記録的な猛暑を契機として、現行規制の見直しを求める声があるのも事実だ。高市内閣が労働時間規制の緩和を検討していることも、こうした声を後押ししている。
厚生労働省は、働き方改革関連法の施行から5年がたったことを受け、現行制度を総点検するためのアンケート調査を行った。調査に回答した労働者3000人のうち、建設業従事者は163人。回答者は、地域や企業規模が偏らないように配慮しているという。
この調査に対し、労働時間を減らしたいと回答した建設業従事者は29・4%(やや減らしたい含む)、増やしたいと回答した建設業従事者は7・3%(やや増やしたい含む)となり、労働時間をさらに減らしたいと考える労働者が多い。
ただ、経営層からは、労働時間規制の緩和を求める声が強い。総点検の企業に対するヒアリングでは、建設業の経営層から「天候の影響による作業遅延、計画変更が発生する場合は労働時間を増やしたい」「残業で対応しないといけない現場を年間数件断っている。月の上限規制を考慮しなければ、受注できた」との声も聞かれる。
プライベートやライフイベントを優先できる新しい働き方に魅力を感じる労働者と、天候の影響や受注の制約を回避したい経営層の間には、明らかな溝がある。労働者側でもキャリアステップやライフステージによって、労働時間に対する考え方は違う。採用への影響を考えれば、経営層の間でも意見は異なるだろう。屋外で作業する建設業は、夏場の働き方を見直すという、重い命題も抱えている。
労働時間に対する考え方は、立場、企業規模、地域などで大きく異なるはずだが、規制は原則として一律だ。現行規制に課題があるとすれば、ここにあるのだろう。
建設業からは、労働時間の繁閑を調整できる変形労働時間制など、特例となる制度の運用見直しを求める声がある。今回の規制緩和の議論が、労使それぞれが理想的な働き方を選択できる、柔軟な制度設計としてほしい。
