手形廃止まで1年(3)「でんさい」を新たな決済手段に 混乱回避へ電子化加速
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手形の最終振出期限を9月末に設定する金融機関は、都銀、地銀、第2地銀で100%に達している。信用金庫など地域の金融機関も追随する動きを見せており、2027年3月末には市場に流通する手形はなくなる。ただ、決済手段としての歴史が長く、商慣習として根付いてきた手形が廃止されると、市場に混乱を招く恐れもある。全国銀行協会(全銀協)は代替手段である電子記録債権への移行を急いでいる。
最終振出期限とは、事業者が取引先に金額などを記入した手形を振り出せなくなる期限のことだ。すでに金融機関の多くが9月末を過ぎると、当座勘定からの支払いを停止することを決めている。金融機関によっては、最終振出期限の設定と同時に、期限付きで手形の買い戻しにも対応している。
27年3月末に手形・小切手の交換が廃止されることに合わせ、全銀協が推奨しているのが、電子記録債権だ。電子記録債権を使えば、従来の手形利用のメリットを残しつつ、電子化に伴う手形発行の業務削減と経費削減の効果が得られる。
全銀協の子会社が運営する電子記録債権「でんさい」の導入事例を見ると、手形の発行枚数を月平均83枚から2枚に減少させた建設業では、1カ月当たり印紙代8万円、郵送代2・5万円の合計10・5万円を削減。年間コストを126万円削減することができたという。
ただ、最終振出期限を9月末とする金融機関が大勢を占めるようになると「代替する決済手段である電子記録債権の申し込みが9月に集中する恐れがある」(全銀協)。全銀協では、殺到する申し込みに金融機関が対応できなくなる事態を避けるため、「最終振出期間を待たず、でんさいに移行するよう働き掛けている」と話す。
一方、高齢層やアナログ慣習の強い中小零細企業にとっては、でんさいがインターネットバンキングの契約を前提とし、基本手数料も必要になることが電子化の障壁になっている。
このため、24年11月には支払金額の範囲を100万円以下とする「でんさいライト」をリリース=表参照。利用契約件数がこの1年で3倍以上に増えるなど、電子化に対応していなかった中小企業や個人事業主の受け皿となっている。
手形廃止まで1年を切った今、建設業は従来の手形から現金払いへと決済手段を見直している。企業規模が小さくなるほど、電子記録債権を利用する企業の割合も小さくなる。全銀協は、資金繰りの観点で現金払いを希望する企業が多いことを認めつつ、「多様な決済手段があると、企業としてのバランスシートも改善する」として、手元資金を効率的に運用する資金繰りの必要性を強調する。
