蓄積された知識を広く届く形に フォトラクション

中央

「建設業界全体に役立つ形へ」と話す中島貴春社長

 フォトラクション(東京都品川区)は、建築専門誌「建築技術」を発行する建築技術(同千代田区)をグループ化し、建築技術者向けデジタルプラットフォーム「KENGI」を立ち上げた。建築技術者の育成と技術継承を支える新たな取り組みとして、中島貴春社長は「これまで蓄積されてきた知識を、もっと広く届く形に変えていく」と語る。  建設業界では、人手不足の深刻化に加え、技術継承が大きな課題となっている。現場ではデジタル化やAI活用が進みつつある一方、実務に生かせる専門知識や経験の共有は十分とは言い難い。特に建築分野では、長年培われてきた技術が紙媒体や個人の経験にとどまり、必要な人に届きにくい。こうした課題に対し、建築技術の知見とフォトラクションの技術を組み合わせて応えるのがKENGIだ。  KENGIではまず、専門誌「建築技術」や「建築構造問題快答集」などの技術書籍をオンラインで購入できる書籍販売機能に加え、従来の専門誌では扱いにくかった時事性の高いテーマや建築技術の発展に寄与する最新情報、専門家による解説記事を「技術コラム」として発信する。若手技術者にも読みやすい内容や現場所長らを取り上げることも考えており、専門性を保ちながらも、より幅広い層に開かれた情報発信の場を目指す。  KENGIの基盤となるのが、建築技術が長年培ってきた専門知識である。建築技術は、1950年創刊の月刊「建築技術」を発行する出版社で、技術者や研究者に向けて実践的な技術情報を発信してきた。「75年にわたって積み重ねてきた知見やコンテンツは、建築分野における大きな財産となる」  今後は、75年分のアーカイブを含む専門誌のデジタル配信、技術書籍や論文を横断的に探せるナレッジデータベースの構築、検索機能の充実に加え、AIの活用も計画している。さらに、技術者同士が交流し知見を共有できるリアルコミュニティーの創出、建設会社向けの技術経営SaaSの開発も掲げる。「AIも組み合わせながら、技術者と企業の双方を支えられる仕組みにしていきたい」と展望を語る。  また、創業10周年を迎えるフォトラクションは、「建設業を取り巻くIT活用は大きく変わった」と10年を振り返り、「創業当時はクラウド活用に慎重な空気もあったが、今では職人を含めてデジタルを使うことが当たり前になりつつある」。その上で、「次の10年は単なるIT導入ではなく、AIをどう生かすかが本格化する局面になる」との見方を示した。  これまでの歩みの中で、「建設業向けの一つのツールを提供する会社から、業界を支える技術そのものを生み出す会社へと進化していく必要性を強く感じている」と話す。KENGIの立ち上げも、そうした変化を象徴する取り組みの一つだ。「これまで培ってきたノウハウをフォトラクションの既存サービスにとどめず、建設業界全体に役立つ形へ広げていく」と強調した。