恵那市とZEN大学 学生主体で空き家リノベ 地元工務店も協力

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工務店の職人と木材を裁断する学生

 空き家を、地域のコミュニティ拠点へ―。岐阜県恵那市は、学校法人日本財団ドワンゴ学園が運営するオンライン大学「ZEN大学」の学生と連携し、旧教職員住宅を活用した空き家リノベーション事業に取り組んだ。学生が設計から施工、活用提案まで主体的に担い、市内の工務店や地域と一体となって進めたリノベーション。空き家の新たな活用モデルの現場を追った。  リノベーションの対象は、恵那市岩村町にある大将陣教職員住宅(木造2階建て延べ約140平方㍍)。移住希望者や学生の滞在拠点として再生を図った。学生は2025年7月に現地を訪れ、市内工務店4社の協力でリノベーション案を作成。11~12月の1カ月間滞在し、指導を受けながら解体や棚・机製作などのDIY工事に携わった。  改修では、2カ所あった玄関を1つにまとめ、1階の壁を取り払って広い共有スペースを確保。天井の一部を撤去して吹き抜けを設けるなど、開放的な空間に再編した。ウッドデッキと室内を一体的に使える動線も整備。一方、2階には個室を配置して、プライバシーに配慮した。  工事に携わった3人の学生(三春咲桜さん、坂本愛子さん、寄金久與さん)に話を聞くと、三春さんは「自分の住む北海道にも空き家が多く、空き家をどう活用するかは、どの地域でも重要なテーマだと思った」と話し、空き家問題への関心から参加したと教えてくれた。人と人との距離が縮まる空間づくりを目指し、壁の撤去や吹き抜けの導入などを提案したという。  施工を通じた学びも大きい。寄金さんは「テコの原理を使うなど工具の扱い方について学べた。壁の構造を実際に見て理解できた」と振り返る。坂本さんは施工関係者について「手間や時間がかかる中、私たちが学べるよう受け入れてくれた」と感謝を述べた。工務店の職員など地域住民との交流も深まり、この地域で暮らす価値を実感したという。  一方、指導に当たった工務店は、「学生の意見を尊重し、できる限り形にした」と話す。「リフォームは水回りや断熱などを優先するが、今回は空間の使い方やデザインに重点が置かれた」とし、住まいとしての機能と意匠のバランスを図る難しさもあったそうだ。それでも、「学生の柔軟で個性的な発想に刺激を受けた」と評価。「教えることで、社内の人材育成のヒントになった」と話し、双方にとって学びの多い機会となったようだ。 【若者が地域課題に新風 空き家活用の新モデル】  3月27日には、学生が内覧会と成果報告会を開催。今後は、地域住民や来訪者が交流し、地域に愛される拠点として活用される構想を示した。講評では地域関係者が「空き家活用の好事例」と評価し、小坂喬峰市長は「人々の笑顔やコミュニティが生まれ、交流が広がることを期待したい」と述べた。  同学園は24年5月に恵那市と包括連携協定を結び、地域活性化やまちづくりなどで連携を進めている。ZEN大学は、山口県長門市で林業DX体験、長野県小布施町で農業体験など、全国で同様の実践型プログラムを展開。参加学生の7割以上を10~20代が占め、若い世代が地域課題の解決に関わる機会となっている。  今回の恵那市の取り組みは、学生、地域建設業者、行政が一体となって空き家の新たな価値を創出した事例。全国から訪れた学生が滞在しながら建設分野に関わることで、行政にとっては外部の視点を取り入れた課題解決や移住・定住促進につながる可能性がある。建設業者にとっても、業界の魅力を若い世代に伝える機会となるなど、多方面への効果が期待される。他自治体への波及を含めた今後の展開に注目したい。