縮小する公共投資(1) 「安定予算」が招いた受注減 中東情勢悪化で広がるひずみ

中央
 2010年代、公共事業費削減の流れに歯止めを掛けるため、政府は「安定的」「持続的」をキーワードに公共事業費を確保してきた。デフレ下では機能したこの考え方は、インフレ局面に転じた2020年代に入り、公共投資に〝ひずみ〟をもたらしている。中東情勢の先行きが見通せず、原油関連製品の供給難とさらなる物価上昇への懸念が高まる今、このひずみはさらに広がろうとしている。  政府の26年度当初予算が4月7日、成立した。衆院選での大勝に余勢を駆った高市内閣は、25年度内成立を目指したが、11年ぶりに4月に入ってからの成立となった。  当初予算に計上された公共事業費は6兆1078億円。前年度と比べ220億円の増額だ。前年度の30億円増と比べれば増額分は7倍になっているが、伸び率は0・4%。「横ばい」「前年度並み」以上の表現は難しい。  実際には、26年度当初予算と昨年12月に成立した25年度補正予算は一体で執行される。25年度補正予算と26年度当初予算の公共事業費は総額8・6兆円で、前年度の同じ額と比べても伸び率は1・5%にとどまる。  一方、資材価格の変動は予算の伸び率を大きく上回っている。国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2015年を基準とした1月の指数は132・8。資材価格の伸び率が30%を超えていることに加え、公共工事設計労務単価も同じ期間に全国・全職種平均で54・9%上昇している。  横ばいで推移する予算と物価高騰により、公共工事の発注件数の減少を招き、「実質事業量の減少」が確実に進んでいる。予算の規模は変わらず、1件当たりの工事金額が膨らんでいるため、発注件数が減る構図だ。  建通新聞社の落札データを見ても、24年度の入札件数は大阪府内で過去10年のピーク時と比べ23・5%減、四国4県で18・9%減、東京都内で18・5%減と軒並み減少している。  問題は発注件数の減少だけではない。2020年代に入ってからの急激な物価上昇に伴い、公共事業ではスライド条項などを活用した価格上昇分の反映が進んでいる。  その一方、契約時点で想定していた出来高に達する前に予算が不足し、工事数量の減少や工事の打ち切りも発生している。こうしたケースでは、当初契約額が受注者に支払われるものの、受注者の調達していた資材・人員にロスを招く恐れがある。現場単位での利益の減少は避けられない。  予算の制約によって実質的な事業量が減少し、受注者である地域建設業の利益も減少している。全国建設業協会の今井雅則会長は「特に地方の地域建設業は仕事がないのが現実。受注競争になってしまうケースもある」と話す。利益率が伸び悩み、「建設業が取り組むべき生産性向上や賃上げに投資を振り向けられない」とこの問題が深刻化することを懸念している。 ◆  ◆  ◆  あらゆるモノの価格が上昇し続け、デフレ下で働いてきた現役世代が経験したことのない局面を迎えています。政府は景気拡大に伴って物価が上昇し、賃金も連動して上昇する「良いインフレ」へと経済を誘導しようとしていますが、直接投資である公共投資の予算に十分に物価を反映できていません。連載企画「縮小する公共投資」では、実質事業量の減少が公共事業と地域建設業にもたらす弊害について取材します(毎週金曜日配信)。