手形廃止まで1年(5)物価高騰、金利上昇が圧迫 資金繰り見直しの契機に

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 建設業界では、工事代金の入金よりも先に資機材費や下請けへの外注費の支払いが求められるため、資金繰りの猶予を得られる決済手段として手形が定着してきた。2027年3月末の手形廃止後も、この建設業の特性は変わらない。物価高騰や金融機関からの借入金利の上昇が続く中、今後ますます緻密な資金繰りが求められるようになる。  国土交通省の調査によると、建設業(元請け)では、長期的に手形の利用が減少傾向にあるものの、25年度時点でも12・8%は下請けへの支払いに一部、手形が使用されている。「全額手形で支払っている」という層も2・3%存在しており、手形へのニーズは根強い。  少なくとも労務費部分について現金払いが求められる工事の元下契約と異なり、建材購入では全額手形払いという例も少なくない。全国生コンクリート卸協同組合連合会のまとめでは、生コンの代金払いは3月時点で「手形100%」が29・3%を占めている。手形廃止まで1年を切った今、決済手段の見直しを急ぐ必要がある。  とはいえ、建設業の資金繰りを取り巻く環境は厳しく、決済手段の見直しには慎重さが求められる。25年度の建設業の倒産件数は、物価高や人手不足を背景に2041件となり、前年度を5・6%上回った(帝国データバンク調べ)。  そこに、中東情勢の悪化による塗料用シンナーやストレートアスファルトの価格高騰が追い打ちをかける。帝国データバンクは「手元資金の乏しい企業にとっては調達が困難となり、経営が立ちゆかなくなる」との見通しを示している。  元請けが手形から現金払いに移行する際、支払いサイトの短縮により一時的に資金繰りが悪化する恐れもある。日本建設業連合会は今年3月、国土交通省に提出した要望書で、元請けから下請けへの支払いに対する規制強化が資材価格高騰や金利上昇と相まって「元請け企業の資金調達への負担」を増していると指摘した。  決済手段の切り替え時、一時的に手持ち資金の枯渇しそうな場合は、当座貸し越しや追加融資など倒産を避ける工夫が求められる。取引適正化に取り組む中小企業向けに、日本政策金融公庫が提供している融資メニューの活用も有効だ。  同時に、発注者との契約時に前払いや出来高払いを求めるなど、支払い条件を改善し、資金繰りを見直すことも重要になる。民間工事では竣工まで支払いの一切ない厳しい条件の工事もあるが、元請けのみに大きな負担を負わせることのないよう、政府はサプライチェーン全体での取引条件に目を配る必要がある。 (この連載 了)