社会的割引率の見直し検討 「必要な公共事業」どう評価

中央
 国土交通省は、公共事業の効率性や必要性を客観的に評価する事業評価の仕組みの見直しを検討している。注目されるポイントの一つが、現在は4%に設定されている「社会的割引率」の見直しだ。事業によって得られる将来の経済効果など、便益を現在の視点から評価するための指標で、率が低いほど新規事業化のハードルは下がる。国土強靱化による危機管理投資や、日本の経済成長力を高める成長投資が求められる中、公共事業の効果を適切に評価できるようにする。  4月に開かれた政府の経済財政諮問会議で、金子恭之国交相は「公共事業がもたらす多様な効果を適切に評価できるよう、評価手法や社会的割引率の検討を進める」と表明した。複数の民間議員が、便益の計測方法や公共事業評価全体の仕組みを刷新するよう求めたことを踏まえたものだ。  公共事業評価は、事業に伴う調査から施工、その後の維持管理に至るまで必要になる費用と事業により得られる総便益を比較して行う。このとき、将来のお金の価値は現在よりも低く見られるため、社会的割引率を用いて各年の金額を現在の価値に換算する。率が高ければ高いほど、公共事業によって将来得られる便益が現在から見て目減りし、費用に見合わなくなってしまう。  社会的割引率は00年以来、4%に設定されてきた。長期国債の実質利回りを参考に設定した指標が現在まで引き継がれ、利回りがゼロからマイナスで推移した10年代以降も見直されることはなかった。経済財政諮問会議で、民間議員の一人は将来世代が受け取る便益が過小評価されることに懸念を示し、諸外国の基準を踏まえ「2%程度へ下げる必要がある」と指摘した。  ただ、社会的割引率が下がったとしても、新規事業化のハードルが下がるだけで、公共投資の総量が増えるわけではない。年度ごとの事業量は、あくまで毎年度の公共事業費の予算額にかかっている。  それでも、社会的割引率が現在よりも低くなれば、長期に便益を生むような事業が評価されやすくなる。人口減少が進む中、従来通りでは費用対効果が高くなりやすい都市部に公共投資が集中する恐れもある。社会的割引率の見直しや、個々の公共事業の評価手法の精緻化と合わせて、日本全体でどのような公共投資が必要かを危機管理と経済成長の両面から示し、必要な予算を確保する戦略が求められる。