〈かわさき未来会議〉川崎市長と川建協・神中建会長ら  「官民連携で川崎の明日に種をまく」

神奈川

右から福島会長、福田市長、山根会長、岡村支部長

 2025年10月の川崎市長選において、これまでの3期12年にわたる市政運営の実績が評価され、福田紀彦市長が当選し、4期目がスタートした。京急川崎駅周辺の再開発など観光や文化、産業の新たな拠点づくりが期待される。災害時における建設業の役割、人材確保に向けた官民連携の在り方をテーマに、福田市長、川崎建設業協会(川建協)の山根崇会長、神奈川県中小建設業協会(神中建)の福島圭一会長、神中建川崎支部の岡村清孝支部長の4氏が意見を交わした。  ―災害時における市内建設関連団体の協力は必要不可欠です。今後、市や協会で重点的に取り組みたい施策はありますか。  福田 平時のまちづくりはもとより、災害発生時においても地元建設事業者の皆さまが復旧・復興の担い手として重要な役割を果たしていることは認識している。本市では、大規模地震などの都市型災害を見据えた防災対策を進めているが、地域を熟知し迅速に対応できる皆さまの存在は不可欠だ。引き続き連携と協力をお願いしたい。  山根 窓口の一本化を徹底し、個人や特定業者への個別対応が発生しない体制を整えなくてはいけない。初動時の対応窓口について協会側から行政へ明確に示し、連携して対応していきたい。  ―川崎市は「災害協定」と「防災協力事業所」が入札参加におけるインセンティブにもなっています。この二つは重要な役割を担うものの、活動内容が異なります。それに対するお考えや要望について教えてください。  岡村 災害協定を結んでいる事業所は、有事の際に動けるようにBCPを策定する他、市主催の訓練などに参加している。一方で防災協力事業所は、労務提供、物資提供をどのぐらいできるのかということが重視される。入札参加のインセンティブ項目として、「災害協定」と「防災協力事業所」を性質や役割が異なるにもかかわらず、どちらか一つあれば良いとする仕組みは適切なのか疑問に感じる。両方の協定を取得していることを入札参加の条件にするなどの配慮やインセンティブを考えてほしい。  福田 インセンティブ制度は、行政と企業が共通して目指すべき姿を実現するために活用することが目的。そのためには、制度が実態に即した内容となっていることが必要であり、行政と企業が継続的にコミュニケーションを取りながら、より効果的な制度となるように改善を重ねることが大切だと思っている。  福島 国土交通省では災害時における建設業の重要性を国民へ視覚的に伝えるため、「国土交通省TEC―FORCE」と記載したビブスを応急対応従事者に配布し、本年度から本格運用を予定している。災害報道では自衛隊などが中心で、地域を支えている建設業の活動が十分に認知されていない現状がある。川建協と神中建川崎支部は川崎市と災害協定を締結していることを踏まえて、災害対応時に被災者や地域住民に安心感、信頼感を与えられるよう「川崎建設業協会特設作業隊」ではなく、「川崎市」の名称を用いたビブスを作ることも一案と考えているが、どうか。  福田 とても良いアイデアだと思う。昨年、関東地方整備局の局長に「国土交通省TEC―FORCE」のビブスについて話を伺った。企業としての取り組みや貢献が伝わりにくいという課題があり、国土交通省では企業名を表示できるようルールの見直しを進めていると聞いている。公共性の高い仕事に尽力している企業を、目に見える形で示せるだけでなく、企業のPR効果も期待できるため、実施する価値はある。  ―官民問わず人材不足は深刻な問題となっています。東京建設業協会が都と協議会をつくるなど新たな動きが随所で見られています。官民が連携した人材確保の施策がありましたら教えてください。  福田 工業高校や専門高校からだけでなく、普通科高校からもものづくりや建設業に進む道があるということを、広く知ってもらう取り組みが必要だ。そのためには子どもの頃から、かっこいい仕事であるということを伝えていくことが求められる。建設現場もICT化が進み、女性が働きやすい職場環境になってきていることを、現場見学会などを通して積極的に発信していくべき。アメリカでは、現場で働く人は高収入を得られる職業として認識されていて、日本でも今後そのような価値観が広がってくるだろう。  山根 建設業の仕事は必ずしも「体を動かす仕事」だけではなく、幅広い人材が活躍できるような知的要素の強い業務も多く存在する。しかし、その点が十分に認知されておらず、3K(きつい・汚い・危険)という旧来のイメージが残っている。マイナスなイメージを払拭することが、今後の人材確保や組織力強化につながる。残業時間の削減、完全週休2日制の導入、労働環境の改善など、業界の魅力を多くの人に正しく伝えていきたい。  福島 全国中小建設業協会と国土交通省との意見交換の中でも、担い手確保は議題として取り上げられている。医療や介護分野では「ありがとう」と感謝される機会が多い一方で、建設業は社会に不可欠なエッセンシャルワークでありながら、直接感謝される機会が少なく社会生活のために働いているという実感を得られにくい。14年連続で賃金が上昇していることなどを含め、正しい情報を発信していくことが重要だ。  岡村 若い世代に対しては、SNSの活用方法や見せ方を工夫する必要がある。写真や動画の撮り方、見せ方を意識することで、同じ内容でも印象や伝わり方が大きく変わる。情報の伝え方や方法を学び、正しい情報を届けていきたい。  ―人手不足の影響を受けて、外国人労働者が活躍している現場も増えていますね。  山根 現場作業に従事する外国人が増加している一方で、施工管理などの中核的な業務を外国人が担う段階にはまだ進んでいない。施工管理は、人とのコミュニケーション能力が大事な職種であり、日本語能力の面で課題がある。今後は、言語やコミュニケーションの壁を補完する形でAIの活用が進み、外国人材の活躍領域がさらに広がっていく可能性がある。  福島 人手不足を補うため外国人雇用を進めたい一方で、日本語能力が一つの壁になっている。ただ、日本でさらに語学教育を行うことで、現場での意思疎通はより円滑になるのではないかと感じている。  岡村 技能実習制度が終わり育成就労制度や特定技能、高度人材といった形で受け入れの枠組みが広がっているが、実際に受け入れにチャレンジしてみると有効性はあるものの、地域や現場では「外国人が入ってくる」というマイナスなイメージが根強い。建設業界が中心となり、先入観を払拭していければ、外国人人材の活用は広がる。  福田 川崎区には、外国人を雇用したことがある企業が約1500社も存在しているが、日本語教育をどうすればよいか分からないという企業も少なくない。個社で対応の難しい日本語教育についてグループや団体で実施するなど、市内業者の皆さんと協力しながら共生社会に向けた取り組みを模索していきたい。  ―最後に、まちづくりや建設業界の発展に向け、それぞれの立場から期待、要望などがあればお聞かせください。  山根 工事の現場を十分に理解していない市の担当者が増えていると感じている。現場に対する相互理解を深めるためにも合同勉強会などを実施したい。書類作成優先ではなく、現場を最優先にして業務を進めるのが望ましい姿だ。  福島 昨年12月に第3次担い手3法が施行されたことを踏まえて、現場監督をはじめ建設業に従事する職員の皆さまには、関連法令を十分に理解してもらい、適正な工期の設定や変更に適切に対応できる体制を整えてほしい。市内の土木事業者は公共事業への依存度が高い。他市を見ると発注方法を工夫している自治体がある。くじ引きはなくならないかもしれないが、受注制限の設定や入札条件にインセンティブを加えることも一つの方法かと思うので、ぜひとも検討していただきたい。  岡村 人材不足や後継者不足を背景に、中小の建設業者を中心に廃業や倒産が増加している。資材価格の高騰や資材調達の困難化も重なり、業界全体が非常に厳しい状況にある。国や県、市には、よりスピード感を持って施策を講じることを求める。われわれと継続的に情報共有やコミュニケーションを図りながら、業界を支える施策を考えてほしい。  福田 川崎市は35年まで人口増加が見込まれており、今後も大規模な拠点整備や活発な民間投資が続いていく。こうしたまちづくりは、市内事業者の皆さまの支えがあって初めて成り立つものであり、その成長は市の発展とほぼ一体のものだと考えている。人手不足など厳しい課題もあるが、行政と事業者が密にコミュニケーションを取りながら、共に課題解決に取り組んでいくことが大切だ。日頃の地域づくりだけでなく、災害時にも頼れる大切なパートナーとして、これからも力を合わせてまちの発展に取り組んでいきたい。  ※2026年6月25付紙面に「川崎市まちづくり特集」を掲載