「2040年 縮退の時代<1>」総合的な視点での計画的な火葬場整備を

静岡
 「縮退の時代(しゅくたいのじだい)」。日本は従来の想定を上回るスピードで人口減少、高齢化が進行している。約15年後の2040年には団塊世代が90歳前後となり、団塊ジュニア世代は65歳に達する。社会や都市、経済がこれまでのように拡大するのではなく、規模の縮小へと舵を切る時代となった。人口や経済に見合った、持続可能な社会をいかに再構築するかを考える。  静岡県の人口は約346万人、高齢化率は約31%に達している。全国平均を上回るペースで人口減少と高齢化が進行しており、2040年は地域社会や社会基盤の維持にとって重要な転換点になると考えられている。団塊世代が90歳前後となる2040年。高齢化に拍車がかかり、死亡者数の増加が予想される。日本の火葬率は、ほぼ100%。死亡者数の増加は、そのまま火葬需要の増加につながる。  “多死社会”―。火葬件数の増加により、火葬場にはこれまで以上に安定した運営と十分な処理能力の確保が求められる。40年を見据えた火葬場整備では、火葬能力の確保だけでなく、施設の長寿命化、利用環境の向上、人材確保、災害対応などを含めた総合的な視点での計画的な取り組みが求められる。  5月29日、総務省発表の「2025年国勢調査速報値(25年10月1日現在)」によると、静岡県内の人口は346万8845人。20年の前回調査比16万4357人減と、全国で2番目の減少数となった。減少率では、前回の1・8%から2・7ポイント拡大の4・5%。これは過去最大。  鈴木康友知事は「人口減少が加速度的に進み、改めて強い危機感を持った。現実を真摯(しんし)に受け止め、人口減少の抑制対策に加え、将来にわたって豊かで活力ある社会を構築する適応対策に取り組む」とコメントしている。  静岡県が速報値に基づき集計した26年5月1日現在の人口は344万8607人。内訳をみると、自然動態が2169人の減少(出生1504人、死亡3673人)、社会動態は2156人の増加(転入1万7140人、転出1万4984人)。   また、住民基本台帳に基づく静岡県内の65歳以上の高齢者人口は110万3046人。これは、デジタル庁が推進する地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化に伴う26年1月1日時点の数値。総人口354万4248人のため、高齢化率は31・1%と、過去最高だった。  後期高齢化率(75歳以上)は18・3%で、こちらも過去最高。前年度から1万1310人増加した。市町別の後期高齢化率は、西伊豆町34・4%、川根本町33・4%、松崎町32・4%の順。 【静岡県内の火葬場】  高齢化の進展に伴い、死亡者数の増加は、死亡数が出生数を上回る「自然減」の増加からも顕著だ。特に団塊の世代が80代後半から90代を迎える30年代後半から40年頃にかけては、死亡者数が高い水準で推移すると予測されている。  静岡県に限ったことではないが、火葬件数の増加により、火葬場にはこれまで以上に安定した運営と十分な処理能力の確保が求められる。火葬場は、住民生活に欠かすことのできない重要な社会基盤施設。40年を見据えた火葬場整備では、火葬能力の確保だけでなく、施設の長寿命化、利用環境の向上、人材確保、災害対応などを含めた総合的な視点での計画的な取り組みが求められる。  市町別の後期高齢化率の高い地域では、火葬場・斎場の整備が進む。3月25日には、川根本町上長尾に「川根本町斎場」が完成。5月7日には、西伊豆町田子で「西豆新斎場建設」の安全祈願祭が行われた。牧之原市勝俣では、新火葬場の整備に向け、建設予定地の用地取得が進んでいる。  静岡県内でも火葬場の用地選定や改修設計、発注者支援などの実績がある「一般社団法人火葬研(東京都千代田区)」の代表理事・武田至氏は、「本来、ゆとりと心安らぐ空間である斎場・火葬場の建設にも、コスト優先の考え方が色濃くなっている」と話す。故人を送る施設としてどうあるべきかよりも、建築材料費・資機材、労務単価の上昇による影響は、最後の別れの場にも現実をつきつけている。火葬場建設に補助金制度がないことも一因だ。武田氏は「地域材使用による補助金・交付金利用など、自治体も工夫をしている」。  いわゆる “火葬待ち”(火葬場の予約が取れず順番待ちになる状況)は「地域によって、さまざま。首都圏は1週間を要するが、(3月25日完成の)川根本町斎場では予約が即日可能」な状況だと言う。  また、全国的にPFI事業による火葬場建設・運営も開始された。「PFIは、どうしても建設業者主導で進む」と言葉を濁すが、設計者の意図との齟齬(そご)、施設への“想い”の反映は、コスト優先の陰に隠れてしまう。  静岡県内の“火葬待ち”について、県内の葬儀社(故人の見送りから葬儀後のサポートまで、多岐にわたるサービスを提供する専門業者)のネットワーク「静岡県葬祭業協同組合(静岡市葵区)」の熊澤正樹理事長は「年末年始は、やはり予約が取りづらい傾向がある」と話す。静岡市葵区にある静岡斎場(火葬炉12基)では「1週間前からシステム上で予約が可能なこと、1日に27体の火葬が可能なこともあり、現時点では都市部のように日数を要することはない」と付け加える。  静岡市内では、風習として「骨葬」(火葬後に葬儀・告別式を行う)があり、火葬場への参列者も多く、待合室のスペースも必要とされていた。しかし、最近は「骨葬ではなく、通夜、葬儀・告別式、火葬という順番が多くなり、火葬場の待合室もコンパクトになってきた」。 協同組合の組合員からは、「火葬場のみより、式場併設の斎場整備の要望が多い」という。また、「静岡県内は公設公営や、運営主体が行政組合、広域施設組合の火葬場のため、民営火葬場の事情とは異なるのではないか」とも分析する。 <竣工>  3月25日、川根本町上長尾に「川根本町斎場」が完成した。当日の式典で、薗田靖邦川根本町長は「老朽化した斎場を、合併特例債事業として新たに整備し、本日を迎えられたことは大変喜ばしいこと。町民にとって心温まる施設になるよう期待する」とコメントしている。  斎場の規模は鉄筋コンクリート一部鉄骨造2階建て延べ610平方㍍(人体炉2基、動物炉1基)。設計・監理は内藤建築事務所、建設工事は大河原建設、火葬炉設備工事は宮本工業所が担当した。 <新設>  牧之原市は、新火葬場の整備に向け2026年度は建設予定地の用地取得などを進める。建設予定地は勝俣2879ノ6他、敷地面積2万6398平方㍍。  新火葬場の設計については、内藤建築事務所が基本設計を担当。同事業では、基本設計までは牧之原市が担当し、実施設計以降は吉田町牧之原市広域施設組合が引き継いで担当する。  同組合は、基本設計完了後、26年度に実施設計に着手する。27年度から造成工事、建設工事に着手し、28年度までの2カ年で整備を実施していく計画で、29年度の供用開始を目指す。  新火葬場の計画規模は、鉄筋コンクリート造が原則だが、鉄骨造などの工法も選択可能で平屋を基本とする。所要機能は、火葬炉(人体炉4炉、動物炉1炉)、火葬機能、待合機能、管理機能。  5月7日には、西伊豆町田子で西豆新斎場建設の安全祈願祭が行われた。  老朽化が進む現斎場の状況を受け、新たに建設。規模は木造、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)2階建て延べ3215平方㍍。  設計・監理は高木滋生建築設計事務所、本体工事は河津・青木・国本特定建設工事共同企業体、関連工事は宮本工業所が担当する。 <建て替え、臨時運営中>  浜松市は、24年9月から27年6月までの予定で、浜松斎場(中央区中沢町47ノ1)を現在の火葬棟の東側に建て替えている。建設から51年が経過し、老朽化による施設劣化のため、斎場運営を続けながら新斎場を建設している。  「浜松市斎場再整備事業」は、雄踏斎場の改修(増設)を含め、23年9月22日に落札者を西松建設グループ(代表企業=西松建設静岡営業所、構成企業=石本建築事務所名古屋オフィス、竹下一級建築士事務所、フジヤマ、中村組、林工組、宮本工業所、五輪、合人社計画研究所)に決定。24年2月27日付けで、SPC「はまゆうの杜」とPFI事業契約を締結した。  工事期間中は、火葬棟は現施設を使用し、近隣の葬祭業者から借り上げた臨時待合棟と臨時駐車場で運営を継続している。  その他の各自治体、または複数が共同で運営する広域組合が管理する公営の火葬場は図・表の通り。

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