建内博行氏(たてうち・ひろゆき=建内レンタル代表取締役)
岡山
建内博行氏(たてうち・ひろゆき=建内レンタル代表取締役)
「1人でも多くの人を熱中症から守りたい」―。広島県と岡山県で仮設トイレ・住宅建設用資材のレンタル事業を展開する建内レンタル(広島県福山市)。2022年に社員が熱中症を発症し、救急車で運ばれたことがある。早期に点滴治療を受け、幸い大事には至らなかったが、一歩間違えれば命の危険にもつながっていた。建内博行社長は、「現場に体を冷やせるものがあれば熱中症を防げたのではないか」と考えたことをきっかけに、仮設冷却ルーム「ペンギンROOM」を開発した。
開発に向けては、これまでのノウハウを生かせる仮設トイレに着目した。「躯体製造で培った技術で涼しい部屋をつくれる」。建築や電気の職人たちにも協力を要請し、便器やタンクを取り付ける前の仮設トイレにエアコンを取り付けた1人用のペンギンROOMを製作した。コンパクトで軽く、スペースが限られた現場にも設置できることが特徴だ。
25年に1人用の展開を始めると、利用者から「冷蔵庫を置いて弁当や飲み物を冷やしたい」「女性作業員が現場で着替えられるようにしたい」などの声が上がった。その声に応えるため、プレハブハウスを活用した2人用も開発し、今年の5月に提供を開始した。
いずれも外気温より約10度低い室温を確保し、工事不要の100㌾電源接続のみで稼働する。休憩室の他、更衣室やウオーターサーバー室として利用でき、配送・設置・回収までワンストップで対応。利用者はリモコン操作のみで使用を開始できる。
実際に製品が完成しトラックで運ぶ際、「エアコンの取り付け強度が足りずに、走行の振動で外れることもあった」と建内社長は振り返る。トライアンドエラーを重ねるとともに、利用者からの要望を受けて改良を行い、今では1人用を15台、2人用を6台在庫に持つ。希望があれば、「現地でのデモンストレーションや販売にも応えたい」と柔軟な姿勢を見せる。
厚生労働省がまとめた25年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、職場での熱中症による死亡者および休業4日以上の業務上疾病者の数は1803人。統計を取り始めた05年以降で最多となり、24年と比べて43%も増加している。そのうち、業種別では建設業が292人で2割近い数字だった。
こうした状況の中、「職人たちは真面目な人が多く、なかなか休もうとしない」と建内社長は指摘。熱中症防止への意識は高くなっているものの、「元請け業者から休むよう指示があっても工期というジレンマを抱え頑張ってしまう」作業員が多いという。体調が悪くなる前に必要な対策を講じることの重要性を訴え、気軽に休憩できるペンギンROOMの活用促進に努める。
現在は大手ハウスメーカーなどの住宅建設現場を中心に展開しているが、休憩所と作業場の距離がある現場や工場などからも引き合いがある。今後はそういった現場の他、花火大会などのイベント会場での展開も見据える。さらに在庫数を増やし、あらゆる注文に応える。熱中症対策の一つとして広く活用されることで「社会課題の解決」に貢献する考えだ。
