酷暑と向き合う(1) この夏 どう乗り切るか 尽きない現場の不安

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 気象庁のまとめによると、今年の3~5月の平均気温は平年を1・54度上回り、統計開始以来2番目に高くなった。北陸、近畿、九州北部は最も平均気温が高かった。この夏の気温も、平年を超える見通しが高いという。  職場での熱中症対策を企業に義務付ける、改正労働安全衛生規則(安衛則)が施行され、6月で1年がたった。暑さ指数(WBGT値)28度以上か、気温31度以上の環境で、連続1時間以上か1日4時間超が見込まれる作業には、体制整備、手順作成、関係者への周知が義務付けられている。  法令改正のあった2025年に職場で発生した熱中症の死亡災害は19人となり、18年以降で最も低い水準となった。建設業の熱中症による死亡災害も5件となり、前年と比べて半減した=グラフ参照。昨夏の全国の平均気温が統計開始以降で最高であったことを考えれば、熱中症の重篤化を防ぐ法令改正には効果があったと言えるだろう。  ただ、休業4日以上の死傷災害は全産業で前年比43・3%増の1803人、建設業で28・1%増の293人と、いずれも過去最多だ。気温40度を超える厳しい環境にある屋外作業で、現場に対策を徹底することは容易ではない。  今夏も全国の現場で1億円を超える熱中症対策費を見込んでいる大東建託は「対策を始める時期が年々前倒しになっている」(安全品質管理部)と話す。同社では、1時間に1回の休憩、余裕ある工期の設定、ライブカメラによる現場監視といった対策を講じており、体制整備や周知を含めると、4月から対策の準備を始めている。  今年1月から段階的に施行されている改正労働安全衛生法では、元請けに対し、個人事業者への安全衛生対策を義務付けた。労働災害が増加している高齢者を雇用する企業に対し、高齢者の作業環境の改善や作業管理などの措置を講じる努力義務も設けられた。年々厳しくなる暑さから、属性の異なる労働者を守る、きめ細かい対策が建設現場に求められる。  全国で猛暑日が続き、気温40度を超える「酷暑日」が全国で観測された昨夏を教訓として、公共工事の発注者も対策を強化している。国土交通省は昨年12月の段階で、「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」を発表。猛暑の期間に休工を可能とする試行工事、猛暑日を考慮した工期の設定、猛暑期間に現場での施工を回避できる工程の工夫、などの対策を講じる。  現場の熱中症対策の経費は、積算時の「現場環境改善費」から切り離し、精算時に発注者が負担する。精算額の上限も現場環境改善費の50%から100%に引き上げた。  現場の対策を強化する一方で、夏季の現場作業を可能な限り減らす取り組みも進む。厚生労働省が検討している労働基準法の改正でも、繁閑に合わせて労働時間を調整できる「変形労働時間制」の見直しがテーマの一つになっている。  ただ、夏季の稼働を減らした場合に、技能者の給与を確保する具体策は見つかっていない。技能者への賃金支払いを月給制に変えたとしても、出来高を減らした企業は、従来通りの給与を支払うための原資も失う。  現場で働く人の健康を優先しつつ、あらゆる対策を講じて施工を継続したい―。たとえ企業の本音がそうであったとしても、夏季の気温上昇はそれを許してくれないかもしれない。現場で熱中症患者を出さず、この夏をどう乗り切るのか。業界の不安は尽きない。  (この連載は毎週金曜日に配信します)