浜松市橋梁長寿命化特集

静岡

馬郡跨線橋

 高度経済成長期に整備された多くの道路や橋梁が整備後50年以上経過し、適切な保全や補修などの維持管理が必要な事態を迎えている。  浜松市は、市が保有する道路インフラの適切な管理を一体的に進めており、「予防保全型維持管理」に向け、損傷が軽微なものも踏まえて修繕を行い、リスクベースメンテナンスの考えに基づいた橋梁の維持管理に努めている。  今回、浜松市の橋梁の維持・管理の取り組みや2026年度の事業予定について紹介する。 ◆浜松市の橋梁の保全・補修の取り組み方針  浜松市内には、市が管理する橋梁が約5800橋あり、すべての橋梁について5年に1回の定期点検を実施している。橋梁点検は14年度より始まり1巡目(14~18)、2巡目点検(19~23)の点検が完了し、24年度から3巡目点検(24~28)が開始された。これまで市では健全性Ⅲ(早期に措置が必要とされる)と診断された橋梁が1巡目点検で456橋、2巡目点検で249橋、3巡目点検の25年度末時点で85橋となっている。そのため、健全性Ⅲと診断された橋梁を先行して次回点検までに確実な措置を実施してきており、1巡目健全性Ⅲの措置は23年度に全て完了し、2巡目健全性Ⅲの措置も計画通り進捗している。一方、健全性Ⅲの予備軍である健全性Ⅱの橋梁数が増加傾向にあるため、今後も計画的かつ着実な修繕が必要となっている。特に、建設後50年を超える橋梁も多く見られることから、損傷が軽微な状態でも修繕の実施が必要な場合もあり、予防保全を目標に一体的な取り組みを行う方針である。 ◆長寿命化、維持管理の指針  23年度末に改定した「浜松市道路橋長寿命化計画(個別施設計画)」では、リスクベースメンテナンスの考え方を、1・2巡目で蓄積された点検および修繕の結果より、緊急輸送道路などの路線の重要度と建設年次に応じた管理区分に設定し直した。また、管理区分による管理目標を設定し、優先度の高い橋梁から予防保全型維持管理への転換ができるよう位置付けている。毎年度、法定点検結果に基づく修繕箇所の追加といった更新も行っている。 ◆点検の進め方  1巡目の法定点検は14~18年度、2巡目の法定点検は19~23年度までの各5カ年で全て完了し、24年度からは、3巡目の法定点検が開始となった。緊急輸送道路などの重要な路線上や架橋後50年以上経過、塩害区域内などの条件に合致した橋梁は、点検を主に外部委託。そのほかの橋梁は、主に市役所職員で点検を進めている。市内にある約5800橋のうち約3000橋が外部委託、約2800橋が職員の点検となる。25年度は、全体の約19%に当たる1099橋の点検を実施し、26年度は約1262橋の点検を予定している。また、職員点検においては22年度からタブレットを導入し、現地で入力作業が可能となり、作業の効率化が図られ、現地での前回点検との比較により診断精度が向上してきている。 ◆耐震計画の進め方  浜松市は、橋梁メンテナンスと並行して、過年度より橋梁耐震化事業(架替更新を含む)を行っている。  第1期耐震化計画(08年策定)では、1996年より前の道路橋示方書に基づいて整備した緊急輸送道路上で、橋長15㍍以上の橋脚がある56橋と跨線橋20橋、高速道路をまたぐ橋梁28橋の計104橋を優先的に進め、25年度末時点で101橋の対策を完了し、残る3橋については現在架け替えを実施中である。第2期耐震化計画(21年改定)では、橋長・橋脚によらず緊急輸送道路上の橋梁の耐震化を図るほか、緊急輸送道路から救急病院などの災害対応拠点につながるラストワンマイルの橋も対象とし、計257橋で耐震化を図ることとしており、25年度末時点では52橋の対策を完了している。 ◆26年度の事業予定について  橋梁補修は、県道細江舞阪線〈馬郡跨線橋〉など109橋で工事を実施し、耐震補強は国道362号〈篠原橋〉など8橋で対策を進めていく。 「浜松市道路施設管理基本方針・浜松市道路橋長寿命化計画(個別施設計画)」  浜松市は、令和6年3月に「浜松市道路施設管理基本方針」を策定し、この方針をもとに法定5施設および舗装・道路斜面等の個別施設計画について、改定および策定した。浜松市道路施設管理基本方針では、橋梁やトンネルなどをはじめ、さまざまな道路施設において、現状の把握および課題を整理し、道路施設ごとの優先度の見直しや事業間優先度を設定し、中長期維持管理シナリオを策定することで、浜松市が維持管理する道路施設全体の目指すべき方向性を示した。  浜松市道路橋長寿命化計画(個別施設計画)においては、高度経済成長期以降に集中的に建設された橋梁の老朽化が進み更新(架け替え)や修繕の費用が集中的に必要となることや、迫りくる南海トラフ巨大地震に備えるため、リスクベースメンテナンスの考え方をもとに管理区分を設定し、本格的な予防保全型維持管理への移行を目標とした。予防保全型維持管理により道路橋の長寿命化、トータルコストの縮減および予算・事業の平準化をさらに推進し、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指している。  予防保全型維持管理とリスクベースメンテナンスについての方針は次の通り。 【予防保全型維持管理】  施設特性を考慮の上、安全性や経済性を踏まえつつ、損傷が軽微である早期段階に予防的な修繕等を実施することで機能の保持・回復を図り、大規模な修繕や更新をできるだけ抑制することにより、中長期的な維持管理・更新等に係るトータルコストを縮減すると共に予算の平準化を行うこと。 【リスクベースメンテナンス】  対象とする全ての橋梁に対し、同じ水準の維持管理を行うためには、十分な予算など(人・設備・予算・情報・時間・技術)を確保する必要がある。しかし、橋梁のストックは膨大であり、予算等を十分に確保することは非常に困難である。また、交通量が多い国道などに架かる橋梁と生活道路の市道に架かる橋梁を同じ水準で実施することは、過剰な維持管理となることが明らかである。こうしたことから、限られた予算などに応じてリスクベースメンテナンス(RBM)の考え方により橋梁の重要度や損傷の影響度等を考慮の上、実施することを基本方針とする。  リスクベースメンテナンスとは、メンテナンスの対象に想定されるリスクを定義し、リスクが生じた場合の影響の度合いとリスクが発生する確率から優先順位を決定し、メンテナンスを行う考え方のこと。