〈安全特集〉現場の全員が主体的に関与を 神奈川労働局 宿里局長

神奈川

宿里明弘(しゅくり・あきひろ)局長

 今年も「全国安全週間」が7月1日にスタートする。スローガンは「多様な人材 全員参加 みんなで育てる安全職場」。さまざまな背景を持つ労働者が同じ場所で働く建設現場では、一人一人がリスクを正しく認識し、安全対策を講じることが重要だ。無事故・無災害に向けて心掛けるべきポイントや、建設業界全体での働き方改革・担い手確保に向けて解決すべき課題などについて、厚生労働省神奈川労働局の宿里明弘局長に聞いた。  ―全国安全週間のスローガンの意図と、それに基づいて建設業の事業者が心掛けるべき点を教えてほしい。  「今年度のスローガンは、近年の建設現場での人材構成の変化を踏まえたものだと受け止めている。建設現場では、経験、年齢、言語を含め、立場の異なる多様な人材が共に働いていることを前提に、それぞれに応じた安全対策を講じることが不可欠。そして、現場に関わる全員が主体的に関与し、一丸となって災害防止に取り組むことで初めて安全が確保されるものだ」  ―2025年に神奈川労働局管内の建設現場で発生した災害の特徴は。  「建設業で25年に起きた死亡災害は14件。前年の12人から2人増加しており、全産業で43人のうち3割を超える状況が依然として続いている」  「第14次労働災害防止計画(神奈川計画)では、建設業の死亡災害を27年までに7人以下とする目標を掲げているが、現状はその達成に向けては極めて厳しい状況にある。そのため、『死亡災害を起こさない』という経営トップの強い信念の下、各建設現場で安全対策の一層の強化を図ってもらうことが不可欠だ」  「一方、休業4日以上の死傷災害は679人と、前年から50人減少して過去最少となった。建設業に携わる皆さまが日々の安全活動に尽力された結果だと認識している」  「事故の型別でみると、死亡災害・死傷災害ともに、依然として『墜落・転落』が最も多く、死亡災害の44%、死傷災害の31%を占めている。これまで足場に関する規則改正が重ねられてきたが、実態としては、足場よりも脚立やはしごからの墜落災害が多く発生している状況。脚立・はしごを使用しなくても済むよう作業床を設置するなど、作業方法そのものの見直しについても改めて検討していただきたいと考えている」  ―建設現場で労働安全衛生の取り組みを強化する上で、どのような課題があるか。  「現場での日々のKY活動やリスクマネジメントの際、施工の中心となる『本作業』に意識が向きがちであり、準備や片付け作業については慣れや見落としにより対策が十分ではない場面があるのではないか」  「日常的に行う付随作業であっても危険性を正しく認識し、『慣れている作業ほど危険が潜む』との認識の下、安全管理の徹底を図っていただきたい」  ―職場での熱中症対策を事業者に義務付けた労働安全衛生規則の改正から、2年目の夏を迎える。  「熱中症での休業4日以上の災害は全産業で102人と、初めて100人を超えた。建設業が19人だったうち、1人の死亡災害が起きた」  「被災者のうち50歳代が33%、60歳代が26%、70歳以上が7%となり、高年齢者が重篤化しやすい傾向にある。暑さの低減対策や作業管理、体調不良者の早期把握などについて、昨今の改正省令の内容や新しい『職場における熱中症ガイドライン』を踏まえながら、高年齢者の特性に配慮した対策を進める必要がある」 【担い手確保へ、業界全体の取り組み必要】  ―人手不足について、他産業と比べた建設業の求人状況をどのようにみているか。  「神奈川県内のハローワークで受理した求人・求職の状況によると、全産業平均と比べて建設分野は求人数が多い一方で、求職者数が十分に追いついていない。いわゆる『求人はあるが、人が集まりにくい』構造が続いていると認識している」  「賃金水準については、近年の人材確保の必要性を背景に改善の動きもみられる。ただ、求職者が職業選択をする際には、賃金に加えて休日や労働時間、働きがいといった就労環境を重視する傾向もある」  「この点については、建設業では週休2日制の導入をはじめとした働き方改革が進められているものの、25年度の神奈川県内の新規求人における完全週休2日制の割合は、全産業の68・6%に対し、建設業は50・3%にとどまっており、なお改善の余地があると受け止めている」  「ICTの導入をはじめとした生産性向上や、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用など、国・業界一体の取り組みが進んでいることを求職者に丁寧に伝えていくことが、今後の人材確保において重要なのではないか」  ―建設業を持続可能な産業にしていくための要望やアドバイスは。  「建設業は裾野の広い産業。業界全体での取り組みが重要となる。まずは、発注者から現場で働く一人一人まで、安全な労働環境をつくる努力をお願いしたい」  「担い手確保には、長時間労働の改善に加え、建設労働者、特に技能労働者の処遇完全に向けた更なる賃上げが必要。そのためにも、引き続き受発注者間で価格転嫁を進めていかなければならない。そうすることで元請け・下請け間での価格転嫁につながり、建設労働者の賃上げの原資となる。適正な請負代金となるよう、国土交通省をはじめとした関係機関とも連携しながら発注者に働きかけていく」 ※2026年6月26日付紙面に「安全特集」を掲載