酷暑と向き合う(4)熱中症を軽症にとどめる 義務措置以上の対策を

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 熱中症対策には何が求められるのだろうか。労働安全衛生総合研究所で健康研究領域長を務める齊藤宏之氏=写真=によると、熱中症の仕組みを理解し、重症化に向かう流れを軽症の段階でとどめる〝管理〟のことだという。小規模現場で起きやすい死亡災害を防ぐためには、現場の休憩、冷却、救急に係る体制を強化する必要がある。  人間の体には、体内で発生した熱を外に逃がす冷却システムが備わっている。皮膚の血管を広げて熱を逃がし、汗をかくことで体を冷やす。水分や塩分の補給が不十分だったり、高温多湿で汗が蒸発しにくかったりすると、冷却システムが働かず熱中症が発生する。  皮膚の血管を広げた結果、脳への血流が減れば、めまいや立ちくらみといった「熱失神」が起きる。汗で塩分が不足すれば、こむら返りや足がつる「熱けいれん」につながる。齊藤氏は「これらの症状の場合、涼しい場所で横になり、水分と塩分を摂取すれば回復する」と話す。初期症状で対応できれば、休業災害に至らずに済む場合が多いという。  一方で、症状を無視して作業を続けると、水分・塩分の不足が進み、体温の上昇が止まらなくなる。頭痛や倦怠(けんたい)感、吐き気を伴う「熱疲労」は救急搬送が必要となり、意識障害を伴う「熱射病」となれば、死亡災害に至る恐れがある。齊藤氏は「軽症のうちにとどめることが最も重要だ。違和感を抱いたら無理せず休んでほしい」と呼び掛ける。  個人住宅のリフォームなど、少人数で作業する現場は発症リスクが高い。2011~20年の建設業における熱中症死亡災害は全て、従業者数100人未満の事業場で発生した。このうち、半数以上は1~4人の零細事業場が占める。齊藤氏は「小さい現場ほど休憩所の整備や職場巡視といった対策が不十分になりやすい」と指摘する。  対策の出発点は、暑さ指数となるWBGT値の把握だ。作業内容や作業着、保護具で暑熱負荷は変わる。空調服やミストファンは効果的だが、「過信は禁物」だ。WBGT値に応じて休憩頻度を高め、高い場合には作業中止も含めて判断する。症状を我慢したり、言い出せなかったりするケースもあるため、現場全体で休憩サイクルを決め、運用することが有効だという。  2025年6月施行の改正労働安全衛生規則では、報告体制や救急体制の整備などが義務化された。齊藤氏は「義務化された措置を講じるだけでは十分な対策とは言えない」と強調する。酷暑の現場で命を守るには、軽症のうちに休憩をとり、冷やし、救急につなぐ管理を小規模現場まで徹底できるかにかかっている。(この連載終わり)