熱海土石流災害から5年 「隙間ない規制」実効性に課題

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土石流の起点となった、谷埋め盛土の崩落箇所(提供:国際航業)

 静岡県熱海市で2021年に発生した土石流災害から、きょう7月3日で5年になる。人為的な盛土が大雨で崩落し、関連死を含めて28人もの人命を奪った甚大な災害を契機として盛土規制法が整備された。規制区域の指定が進む一方、総務省の調査ではリスクに応じた既存盛土対策に時間を要する事例も見られた。  23年に施行された盛土規制法は、宅地や森林、農地といった対象を問わず、盛土の安全確保のために全国一律の基準が設け、包括的な規制を課す。都道府県と政令市、中核市が盛土を規制する区域を指定。区域内で盛土を行う場合は、発注者が許可を申請する。今年7月時点では46都道府県と20政令市、61中核市が規制区域を指定した。残る沖縄県・那覇市も区域案を公表済みで、近く全国に規制の網がかかる予定だ。  法施行後の状況を精査するため総務省が4月までに実施した調査では、許可に伴う書類が申請者の負担となり、手続きが長期化する事例が見られた。許可事務の効率化は急務だ。許可を要さない届出のみの工事で、地方自治体が独自に事後確認を行ったところ、届出以上の盛土が見つかる事例もあった。完了検査を要しない届出工事の監視体制も今後の課題となる。  規制区域が指定されても、域内にある既存盛土の把握には時間を要する。総務省の調査では、対象となった自治体のうち、基礎的な分布調査を終えたのは半数強。安全性把握に至った団体はなかった。  安全性把握調査の主体は、原則として土地所有者とされる。コスト負担や相続による土地の細分化もあって、ある市からは「調整は事実上困難」といった声も聞かれた。既存盛土調査の進展に伴い、全国の自治体がこうした課題に直面すると見られる。  さらなる課題が、不法・危険な盛土への対応だ。総務省の調査では、法施行後の自治体によるパトロールや市民からの通報により、3県6市で51カ所の危険な盛土が見つかったものの、是正措置を完了した盛土は10カ所のみ。熱海市の土石流災害を受けて行った全国の盛土総点検で災害防止措置を確認できなかった盛土516カ所についても、254カ所が是正措置を終えていなかった。  盛土規制には、宅地開発や農地保全など自治体の幅広い部局が関わる。盛土規制法が規定した監督処分や罰則の規定も、適正に機能させるにはこうした部局の相互連携が欠かせない。  工事現場での土石の仮置きは許可を要しないが、現場外への仮置きには建設業者が、残土処分場への搬出には処分事業者が許可を求められる。適正な土砂処分のため、盛土規制法と合わせて整備されたのが、一定の要件を満たすストックヤード運営事業者の登録制度だ。登録ストックヤードが最終処分する場合は、元請けによる最終搬出先の確認が不要となる。  ストックヤードの登録数は全国1876カ所(5月末時点)。ただし、所在地の地域差は大きく、埼玉県(122カ所)や愛知県(119カ所)のように大都市圏周辺に集中する一方、鳥取県(2カ所)や香川県(3カ所)は極端に少ない。国土交通省は、運営事業者と元請け建設業者の双方に、引き続き登録制度を周知していく考えだ。