2026年度の国交省(高知県内)事業展望

四国
 30年以内の発生確率が高まる南海トラフ地震。高知県内では、自然災害への備えとして道路や河川、海岸の整備促進が求められる中、四国8の字ネットワーク整備や浦戸湾三重防護の推進、気候変動に対応した河川・海岸事業などが進む。これらの事業を管轄する県内4事務所の所長に2026年度の事業内容について話を聞くとともに、自然災害防止に欠かせない四国山地砂防事務所の取り組みを紹介する。 <土佐国道事務所>  ―まずは2026年度の予算額について確認したい。  「予算額は153億4600万円。内訳は、四国8の字ネットワークや道路改良といった改築費に132億4000万円、歩道の設置などを行う交通安全事業(Ⅰ種)に11億4000万円、区画線や防護柵等の設置などを行う交通安全事業(Ⅱ種)に6億3100万円、国道56号の高知市百石地区などで進める無電柱化推進事業に3億3500万円となっている。この他に道路維持管理費があり、当事務所管内の橋梁等構造物補修や防災・震災対策を実施する」  ―続いて個別の道路改築事業について伺いたい。四国8の字ネットワークなど幹線道路の26年度の事業計画はどうか。  「南国安芸道路は延長21・0㌔の自動車専用道路。これまでに香南のいちインターチェンジ(IC)~芸西西IC間(延長9・0㌔)が開通しており、25年3月15日に高知龍馬空港IC~香南のいちIC間(延長3・5㌔)が開通した。残りの芸西西IC~安芸西IC(仮称)間の(延長8・5㌔)については、調査設計や用地買収、改良工事、西分高架橋上部工などの橋梁工事を進める」  「安芸道路は安芸東IC~安芸西IC(いずれも仮称)間の延長5・8㌔で、調査設計、用地買収、改良工事、伊尾木川橋上部工などの橋梁工事やトンネル工事を進める」  「海部野根道路は徳島県海部郡海陽町多良から東洋町野根までの延長14・3㌔で、19年度に事業着手した。当事務所では高知県側の延長6・8㌔で調査設計、用地買収、改良工事を進めるとともに、生見トンネルの工事着手を目指す」  「野根安倉道路は、急峻な地形、ぜい弱な地質などさまざまな技術的課題があり、県からの要望を受け直轄権限代行事業として、20年度に事業着手した。安芸郡東洋町野根~安芸郡北川村安倉間の延長8・5㌔で調査設計、用地買収、改良工事を進めるとともに、野根川橋下部工の工事着手を目指す」  「奈半利安芸道路では、奈半利IC~安芸東IC(いずれも仮称)の延長13・1㌔区間について、調査設計を推進するとともに、安田IC~安芸東IC(いずれも仮称)間の安田地区で用地買収を進める。」  「越知道路では延長3・0㌔の2工区のうち、バイパス区間(延長1・8㌔)が23年6月に開通し、残る現道活用区間(延長1・2㌔)のケヤキ谷橋の橋梁補強拡幅工事や改良工事を進める」  ―維持管理についても確認したい。  「良好な道路機能の維持と、安全で円滑な交通確保を目的として、維持修繕、防災対策、震災対策の各事業を推進している」  「維持修繕事業としては、路面や構造物を常に良好な状態に保ち、一般の交通に支障をおよぼさないよう、国道55号椎名橋や国道56号河ノ瀬高架橋などで橋梁補修を行う他、国道56号焼坂トンネルなどの修繕、国道55号室戸市室戸岬町など各所で舗装修繕も進める」  「防災対策事業では、安全で信頼性が高い道路網を確保するため、被災の可能性がある国道55号で消波ブロック工などの越波対策を実施する」  「震災対策事業では、大規模地震発生時の被害を軽減し、円滑で迅速な応急活動を確保するため、国道33号名野川橋などで橋梁の耐震補強を行う」  ―交通安全事業も重要な取り組みだ。  「道路の交通環境改善、交通事故の防止、道路交通の円滑化を目的として、交差点の改良、視距の改良、自転車歩行者道の整備を進めている」  「交差点改良は、国道33号の旭町交差点(高知市)、蓮池交差点(土佐市)などで実施する」  「自転車歩行者道は、国道33号の岩目地歩道、日下歩道(いずれも日高村)、引地橋側道橋(仁淀川町)、国道55号の吉良川歩道大橋側道橋(室戸市)、川北自歩道(安芸市)、国道56号の百石自転車通行環境(高知市)、北地歩道(土佐市)などで整備を推進する」  「視距の改良は国道33号の川内ケ谷橋(佐川町)で実施する」  ―電線共同溝事業の目的と施工場所を聞かせてほしい。  「快適で美しい都市空間を創造するとともに、安全で円滑な交通の確保、都市災害の防止などを目的として、国道56号の百石地区、また大原町・朝倉南町地区(高知市)についてはPFI事業にて無電柱化事業を進める」  ―最後にDXに向けた取り組みについて伺いたい。  「地域産業の担い手確保と生産性向上を重要な課題と捉え、i-Construction2・0およびインフラ分野のDXを着実に進める。26年度は、南国安芸道路や安芸道路においてICT施工StageⅡのこれまでの取り組みを踏まえ、施工データを活用した現場マネジメントの高度化を図るとともに、資機材配置や工程の最適化による省人化を進める。また、トンネル工事においては、省人化と安全性向上を目的とした省人化施工(SⅠ型)の試行工事に取り組むこととしており、厳しい作業環境における新たな施工のあり方を検証する。こうした取り組みを通じて、ICTやBIM/CIMを活用した先進的な現場づくりを進めるとともに、現場見学会などを通じて地域建設業への普及促進や人材育成にもつなげ、将来にわたり持続可能な道路整備・管理の実現を目指していきたい」 <高知河川国道事務所> ―2026年度の予算額について伺いたい。  「高知河川国道事務所の26年度当初予算は約27・2億円。また『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』を活用した25年度補正予算には約18・4億円を充てている」  ―続いて個別事業の取り組みを確認したい。まず河川事業について教えてほしい。  「河川改修事業のうち、物部川では流下能力向上のための下ノ村地区における河道掘削を継続して実施する。また、計画に対して堤防の断面幅が不足している戸板島地区において、必要な堤防の断面幅を確保するための設計を関係自治体と調整のうえ進めていく」  「仁淀川では、音竹地区や大内地区での排水ポンプ場の整備を進める他、下流部の新居地区と用石地区で流下能力向上に必要な河道掘削を継続する。また、上流部では神母樋門の耐震補強を実施する。」  ―海岸事業ではどういった整備を進めるのか。 「直轄高知海岸の海岸保全施設整備事業については、高潮・侵食対策として戸原工区で中突堤の整備を25年度に引き続き実施する。また、新居工区から長浜工区において河川で掘削した土砂を活用し養浜を実施する。昨年4月より直轄事業として地震・津波対策を行うこととなった香南工区においては、引き続き関係自治体や地元住民と調整を進めながら工事の早期着手を目指す」  ―気候変動の影響を踏まえた河川・海岸事業での取り組みを聞きたい。  「気候変動による豪雨のさらなる頻発化・激甚化や海面水位の上昇などを踏まえた治水計画への転換が必要となっている。物部川では、洪水調節の強化だけでなく、洪水後に発生する濁水の低減や山地から海岸までの総合的な土砂管理などを目的に永瀬ダムなど三つのダムの連携や改良の検討を関係者と連携し進めるとともに、治水計画の変更についても検討を進める」  「仁淀川では24年9月に気候変動の影響を考慮した、河川整備計画の変更を実施しており、引き続き計画に盛り込んだ既設ダムの有効活用、河道掘削、遊水地の整備、横断工作物改良などの検討や整備を進める」  「支川の日下川では、24年12月に特定都市河川の指定を行い、25年6月に日下川流域水害対策計画を策定したことから、神母樋門等の耐震・老朽化対策を加速化させる。また、新日下川放水路では、四国の直轄管理河川では初めてとなる、河川空間のオープン化を25年3月に行っており、放水路内での見学ツアーなど、さらなる河川空間を生かしたにぎわい創出を目指す」  「高知海岸では、海面上昇や台風の強大化によって、高潮・高波・津波などの危険性が増大することが想定されるため、土佐湾沿岸海岸保全基本計画に気候変動の影響を考慮した新たな海岸保全への転換が盛り込まれた。今後は、直轄事業においても関係機関と調整し、手戻りのない海岸保全施設整備に取り組んでいく」 <高知港湾・空港整備事務所>  ―まずは2026年度の予算額について確認したい。  「高知港湾・空港整備事務所の26年度当初予算は約49・4億円。内訳は高知港約18・1億円、須崎港約7・9億円、宿毛湾港約2・5億円、室津港約5・4億円、高知港海岸約15・2億円、高知空港約0・3億円となっている。南海トラフ巨大地震・津波からの防災・減災、早期復興に向けた事業を促進させると共に、県・市町村と連携しながら地域活性化の核となる港湾・空港施設の利活用促進に寄与していく」  ―26年度の主な事業内容を伺いたい。  「港湾整備事業として、高知港、須崎港、宿毛湾港、室津港で防波堤の延伸や地震・津波に対する粘り強い構造への改良を実施する」  「直轄海岸保全施設整備事業においては、高知港海岸でL1津波に対して津波の浸入を防ぎ、L2津波に対しては浸水面積・浸水深の低減と避難時間を稼ぐ『三重防護』による防災・減災対策を進める」  「空港整備事業としては、高知空港で滑走路端安全区域(RESA)の整備に関する設計を行う」  ―個別の事業について確認したい。まず港湾整備事業ではどういった取り組みを進めるのか。  「高知港三里地区では、防波堤の粘り強い構造への改良を引き続き実施する。東第一防波堤で腹付石投入や被覆ブロックの製作・据付、消波ブロックの製作、上部コンクリートの嵩上げ、南防波堤では捨石投入、被覆ブロックの据付、消波ブロックの製作・据付、上部コンクリートの嵩上げ、桂浜防波堤においては、捨石投入、被覆ブロック・消波ブロックの据付、上部コンクリートの嵩上げを実施する。また、南防波堤の延伸においては消波ブロックの製作を実施する」  「須崎港湾口地区では、防波堤の粘り強い構造への改良として西防波堤の消波ブロックの製作・据付、上部コンクリート嵩上げを実施する」  「宿毛湾港池島地区では、粘り強い構造への改良として、防波堤(Ⅰ)の堤頭函中詰材の置き換え施工を実施する」  「室津港室津地区では防波堤(Ⅱ)の延伸として、捨石投入、ケーソン2函の据付、被覆ブロック・根固ブロックの据付を実施する」  ―高知港海岸では三重防護への工事が着実に進んでいる。  「高知港海岸では、第2ラインの種崎(外縁)工区において、堤防の本体コンクリート打設、陸閘の製作・据付等を実施する。桂浜(外縁)工区においては、護岸の鋼管杭打設を実施する。津波防波堤においては、種崎側で床掘、地盤改良、基礎捨石投入、ケーソン2函の据付、被覆ブロックの製作、根固ブロックの製作・据付を実施する」 <中村河川国道事務所>  ―2026年度の中村河川国道事務所の事業費を伺いたい。 「河川・道路の維持修繕費を除き総額118億2400万円。河川関係では直轄河川改修費8億8400万円、総合水系環境整備事業費1億700万円の計9億9100万円。道路関係では道路改築費103億2300万円、交通安全施設整備費5億1000万円の計108億3300万円(調査費、維持管理費を除く)となっている」  ―各事業について伺いたい。まず河川事業について伺いたい。 「直轄河川改修事業では、洪水などの脅威から地域を守るため、河川の流下能力向上対策として、四万十川や中筋川で河道掘削・樹木伐採を実施する。無堤部対策として、中筋川(山路箇所)での堤防整備事業で用地取得、南海トラフ巨大地震対策として、後川佐岡樋門などで樋門の耐震対策を進める。」  ―四万十川の環境整備事業の状況は。  「四万十川自然再生事業として、中筋川(森沢地区)でツル類の餌となる魚類等の繁殖拠点の整備を推進する。本年度以降も地域と協働・連携し、流域生態系の生息環境を整備していきたい」 「24年度に『かわまちづくり支援制度』に基づき新たに登録された『四万十川かわまちづくり』について、市が整備する施設の基盤整備(土工、擁壁)等の工事を始める」  ―道路事業についても伺いたい。 「四国8の字ネットワークの一部として、南海トラフ地震などによる災害時の緊急輸送道路の確保や医療施設などへの速達性の向上や地域産業の活性化を引き続き支援していく」 「国道56号窪川佐賀道路では調査設計、改良・橋梁・トンネル・トンネル舗装工事を、佐賀大方道路は調査設計、用地取得、改良・橋梁・トンネル工事を、大方四万十道路は調査設計、用地取得、改良・橋梁工事を進める。また、宿毛内海道路で調査設計を進める」 「また、交通安全対策として、道路利用者の安全な歩行空間の確保を目的した歩道整備や防護柵や路面標示等の安全施設の整備を進める。」  ―最後に、河川及び道路の維持修繕の取り組みについて確認したい。 「河川維持修繕では堤防の除草、塵芥処理や、樋門・排水機場など河川管理施設の維持・点検・修繕などを行う」 「道路維持修繕では、地域の安全・安心の確保のため、道路構造物の長寿命化・老朽化対策等を進めていく」 <四国山地砂防事務所>   ―高知県内での主な事業を確認したい。  「砂防事業では、吉野川上流域において下流河川区間の河床上昇を防ぐことで土砂・洪水氾濫を抑制し、緊急輸送路や指定緊急避難場所への被害を未然に防止し、地域防災力の確保に寄与している。また、土砂災害警戒区域に地域の重要施設(官公署・医療施設等)や主要交通網(道路・鉄道等)が含まれる流域について、施設整備を実施し土石流対策を推進する。さらに山腹崩壊によって生じる人家被害、交通途絶被害、早明浦ダムへの短期的な土砂流入被害などを軽減するため山腹崩壊対策を実施する。また家屋や幹線道路である国道439号などの地すべりに伴う被害を防止するために地すべり対策事業を推進する」  ―高知県内の2026年度事業費を伺いたい。  「26年度当初の事業費は20億円で、25年度補正予算の9億9500万円と合わせて事業の進捗を図る」  ―直轄砂防事業と直轄地すべり対策事業ではどのような工事を行うのか。  「直轄砂防事業では、境谷(大豊町柚木地先)、西谷川(本山町瓜生野地先)、ヨモギ谷(土佐町川奈路地先)、ほり谷(いの町長沢地先)において砂防堰堤・管理用道路工の整備を推進する。また、井尻地区(土佐町古味地先)、下中切地区(大川村中切地先)等において、集水井等の地下水排除工の整備を推進する」  「直轄地すべり対策事業では、怒田・八畝地区(大豊町)において、集水井等の地下水排除工の整備を推進する」  ―工事に当たりどういったことに留意しているか。  「ICT(土工)を全面的に活用することにより、建設現場における生産性向上および安全性の向上に取り組んでいる。さらに、受注業者の協力の下、体験学習会を開催し、将来の建設業の担い手確保につながる取り組みも推進している」