下水道法改正(1) 課題はインフラ全体に どう支える 自治体の人・予算

中央
 2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえ、下水道の計画的な改築と事業基盤の強化、路面下の占用物件の安全確保対策を規定する改正下水道法が7月15日の参院本会議で可決、成立した。改正法は、技術職員不足や使用料収入の減少に悩む市町村の体制を強化し、計画的な施設改築を後押しするものだ。ただ、人と予算不足の課題は下水道だけに限らない。道路陥没事故の教訓はインフラ全体に及ぶ。  八潮市の道路陥没事故では、走行中のトラックが県道の交差点に生じた大規模な陥没に転落し、ドライバー1人が死亡した。事故を受けて埼玉県が設置した調査委員会は「腐食した下水道管に起因する」との報告をまとめた。  この事故により、全国の下水道が抱えていた潜在的なリスクが明るみに出された。国交省は、陥没事故の原因になった管路と同様の管路を対象に全国特別重点調査を実施。調査の結果、対象延長の16%にあたる748㌔で「対策が必要」とされた。  下水道管路の多くは1990年代後半に整備され、老朽管路の増加はこれからピークを迎える。下水の水位や流速によっては、修繕どころか点検調査が困難な箇所も少なくなく、リスクを見逃せば道路陥没の続発という事態を招きかねない。  「このような事故を二度と起こしてはならないとの強い決意の下、人口減少社会においても強靱で持続可能な下水道を実現する」。金子恭之国交相は、国会審議で改正法の趣旨をこう説明した。  改正法の柱の一つは、地中で進行する管路損傷のリスクを着実に把握し、道路管理者とも連携しながら計画的に改築する「下水道マネジメントの確立」だ。老朽管路の安全性を評価する診断の基準を法制化し、点検頻度・方法の基準も政令で見直す。下水道管理者には診断結果を公表する義務を新設。市民の当事者意識を喚起すれば、修繕・改築に要するコストにも理解を得やすくなる。  下水道管理者には計画的な改築と、そのためのコストを見込んだ収支見通しを示すことを求める。下水道使用料についても、将来的な改築を見据えた積み立てが可能な規定とし、資金を確保する。  合わせて道路法を改正し、下水道など道路占用物の管理者と道路管理者との間で、地下を占用するインフラの維持修繕に関する協定を締結できる制度を創設。占用許可の申請書で維持管理に関する項目を設け、占用物件の工事完了時は図面などを道路管理者に提出することも義務付ける。  改正下水道法のもう一つの柱が、公共下水道を管理する市町村の人的・財政的制約の厳しさが増していることを踏まえた「下水道マネジメントを支える基盤の強化」だ。法律の目的に下水道の基盤強化を明記し、国交省が基本方針を定めることとした。国が下水道管理者と都道府県への技術・財政両面での援助に努めるなど、これまで市町村主体だった下水道管理への国の関与を強める。  本来は市町村が管理する公共下水道を都道府県が管理する特例や、点検・修繕・改築を他の自治体が代行できる制度も創設。都道府県が、複数の下水道管理者の連携を後押しする計画を策定する制度も設ける。  下水道法改正の出発点となった有識者会議で座長を務めた家田仁政策研究大学院大学教授は、「八潮で明らかになった問題は下水道に限ったことではない」との認識を示した。国交省は今、家田氏を中心とした委員会でインフラ全般を対象としたさらなる制度改正に向けた検討を進めている。道路陥没事故が与えた衝撃は、日本のインフラ管理の在り方そのものを変えようとしている。 ◆◆◆  この連載では、改正法の効果や自治体が抱える課題、下水道だけにとどまらないインフラ管理の方向性について取材します。(毎週木曜日配信)