建滴 国家的事業と地域環境の両立 リニアをモデルケースに
中央
静岡県がリニア中央新幹線静岡工区の着工を容認し、自然環境保全協定を締結した判断は、長年停滞した議論に対し行政としての責務を明確化したと言える。鈴木康友知事が示した判断根拠は「県民への説明状況」と「法令手続きの進捗」の2点。これは、公共事業のガバナンスに不可欠の要素だ。
JR東海は、5月末から6月にかけ、22回の説明会を開催。延べ1137人が参加した。大井川の水資源、発生土、生物多様性への措置を説明し、県職員も同席して回答したことで参加者に一定の理解が得られた。流域10市町や利水団体への説明も専門部会での対話を踏まえて進み、関係会議体での報告・了承を経て、社会的受容性は着実に高まった。
法令手続きでも、河川法・盛土規制法の申請を7月3日に所管行政庁に提出。県は許可の「確実な見込み」を得たと判断した。大井川水系を抱える静岡県にとって、水資源は地域の根幹。厳格な審査を経て、協定締結の前提条件が整った意義は大きい。
そして、この行政判断を実効性あるものとするため、県はJR東海が実施する事後調査・モニタリング・環境保全措置について審議する部会を発足させ、7月29日に初会合を開いた。JR東海の新たな対応策、地域関係者から報告される異常事象、損害に関する事実関係の評価と対応策を審議する役割を担う。
平木省副知事は部会の意義を「安全・安心、そして自然環境や水資源に影響を与えないことが工事の大前提であり、その担保として監視体制は極めて重要」と強調。着工前に地質・地下水を把握する高速長尺先進ボーリングの状況確認、着工後にも協定に基づく203項目のモニタリングを確実に履行すること、基準超過や不測の事態への対応を求めた。
JR東海の澤田尚夫専務執行役員(中央新幹線推進本部長)も「環境保全措置とモニタリングを確実に行い、部会を含む関係者と情報共有する。定期報告に加え、異常があれば速やかに伝える」と応じた。
今後も国家的な土木事業の具体化に当たり、環境や技術面で困難に直面することがあるだろう。そのとき、リニア中央新幹線がモデルケースとなるよう、県・国・地域・事業者が制度に基づき連携し、透明性の高い情報公開と厳格な監視体制を通じて、国家的事業と地域環境の両立を実現してほしい。
