連載 サマータイムチャレンジの現場から③江戸川水閘門改築(Ⅰ期)工事(江戸川区~千葉県市川市、大林組)
東京【2026/08/25 東京版に掲載】
現場はまもなく囲いの中の水を抜く作業に入る
大林組が施工するのは水門4門と閘門で構成する新施設のうち閘門部分の工事。熱中症リスクがピークに達する7月中旬から8月上旬にかけて、作業時間を午前7時30分~午後1時30分の6時間とした。通常は午前8時~午後5時の9時間(昼休憩の1時間を含む)のため、開始を30分前倒しして3時間の短縮を図った。
近隣住民への配慮から、騒音の出る実作業は午前8時スタートとし、それまでの30分間を冷房の効いた屋内での朝礼や安全活動、準備時間に充当。昼休憩を設けず、作業時間内にこまめに休息するようにして、熱中症の発生が多い午後2時台より前に全作業を完了させる「6時間集中型」の勤務態勢を取った。作業員からは「疲労の蓄積が格段に少ない」「翌日に疲れが残らない」といった好意的な意見が寄せられている。
現場で特徴的なのは最新のデジタル技術による徹底した熱中症対策だ。全ての作業員が腕時計型のウエアラブル端末を装着。心拍数や位置情報、暑さ指数(WBGT)をリアルタイムで可視化し、異常時には管理者にメール通知が届く仕組みを構築した。
また、AIによる顔色判定システムを導入。タブレットに顔を映すだけで熱中症リスクを4段階で判定し、数値と画像の客観的な指標で体調を把握できるようにした。これにより、多少体調が悪くても「大丈夫」と言っていた作業員に対しても、データを示して休憩を促せるようになった。
休息の環境整備も充実させた。冷房完備の「快適休憩所」には、体の内部(深部体温)を効率よく冷やす飲料を作る「アイスラリー冷蔵庫」を常備。現場内を移動して作業員の体を冷却する「急冷車」も運用した。
これらにより期間中の熱中症ゼロを実現した一方で、大規模な土木工事ならではの課題も浮き彫りになった。中でも障壁だったのがコンクリートの打設で、養生や仕上げを含めると1日6時間の作業では到底終わらない。また、河口に近く潮の干満の影響を受けるため、船を使った作業は川底に接触してしまう干潮時には実施できない。既設水門の開閉状況によって川の流れが速まる時間帯も作業が制限される。
短縮した作業時間の条件下でこれらの作業を実施するためには、柔軟な対応が必要であることを経験した。さらに作業時間を短縮しても、協力会社には短縮していない時期と同額の賃金を支払っている。
それでも大林組がサマータイムの導入に踏み切ったのは、熱中症から作業員を守ることが業界の持続可能性に直結すると考えているからだ。現場責任者は「今回の試行で得られた課題を発注者と共有し、解決していくことが、業界の未来への先行投資になる」と強調した。
